旅行会社クラブツーリズムでは、アクティブシニア層に向けた寺社や仏像を回るツアー企画「こころの旅」が人気を呼んでいる。価格帯や企画の大小もさまざまで、講師とともに徒歩で都内の寺町を散策する3000円のもの、国内の主要なお寺や仏像をめぐるツアーも1万円からある。4泊でお遍路さんを体験するツアーは12万円程度だが、全体の売上げは前年比120%。不景気のなかにあって好調だと言うのは、同社広報部の久保田智子氏だ。
もちろんクラブツーリズムでは、阿修羅展に関連した企画も立てた。東京国立博物館近くのホテルで興福寺の僧侶から法話をいただくこの企画は5000円程度。法話を聞いたあとで参加者は展覧会へ向かい、聞いたばかりの見どころを思い出しながら、仏像鑑賞を楽しむ。のべ550名ほどが参加した。
「国宝 阿修羅展カレンダー2010」(株式会社トライエックス)は、女性を中心に注文が続いている。OL向けの投稿型インターネットサイト「ちょこアゲ」は、お気に入りの癒し系グッズを紹介するサイト。このカレンダーも「ネガティブ気分を盛り上げる」として紹介されている。
前述の通り、フィギュア等の模型製作で知られる海洋堂は、展覧会公式フィギュアとして阿修羅像を製作、会場限定発売をおこなった。高さ14センチとはいえ、6本の細い腕にはきちんと腕釧〔わんせん〕と呼ばれるブレスレットが嵌められ、胸飾や左肩から掛けた条帛の皴までもが丁寧に再現されている。もちろん、顔の表情も、本物をよく模している。これで2980円はお値打ちである。
この「阿修羅像フィギュア」は、もともとのフィギュアファンに加えて、展覧会来場者らの間でうわさとなり、展覧会開催時に用意した1万5000個が2週間で完売した。九州展のときに追加製作するも、すぐに売り切れ。トータルで2万9千個を売り上げた。売り子に売切れを告げられ、「どうしても阿修羅のお人形がほしいんだよ」と座り込む老人までいたそうだ。
さらに本格志向の高級阿修羅も、ブームの余波で販売数が伸びている。著名な仏像を模刻し、製作・販売している株式会社MORITAは、仏像の色褪せや汚れまで緻密に再現するこだわりようで、自社商品を「リアル仏像」とネーミングしている。MORITAのパンフレットを開くと、興福寺・阿修羅はもちろん、京都は浄瑠璃寺・吉祥天女像や広隆寺・弥勒菩薩といった仏像界のアイドルが並ぶ。人気はやっぱり阿修羅と弥勒菩薩。高さ30センチほどの阿修羅は6万3千円といい値段だが、すでに1千体を売り上げた。