2024年7月23日(火)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2010年1月22日

 「新成長戦略」では、「若者・女性・高齢者・障がい者の就業率向上のための政策目標を設定し、そのために、就労阻害要因となっている制度・慣行の是正、保育サービスなど就労環境の整備等に2年間で集中的に取り組む」としている。大いに期待するところだが、すでに阻害要因の多くは洗い出されているのではないか。しかも、経済状況は待ってはくれない。

 「女性M字カーブの解消」に限らず、「新成長戦略」が示す戦略は全体として大枠がほとんどである。もっともな方針を示したところで、実現に向けて動き出さなければ絵に描いた餅に過ぎず、日本経済は何ら変わらない。財政制約も大きい中、優先順位をきちんと決めて、もっと時間を短縮して積極果敢に取り組んでもらいたい。

肝心の企業政策が示されていない

 「新成長戦略」のもうひとつの課題として、企業に対する政策が明示されていないことが挙げられる。需要の盛り上がりは供給増と表裏一体の関係にある。女性や高齢者などの就業率向上にしても、企業活動の活発化なくして雇用賃金だけ増えることは考えられない。

 もちろん、「新成長戦略」には、環境・エネルギー分野での戦略や医療・介護・健康関連産業を成長産業化するといった産業育成戦略、言い換えれば供給側を強化する戦略も多く組み込まれている。だから、「新成長戦略」全体が需要だけに偏っていると評する向きがあるとすれば、それは全くの事実誤認だ。

 しかし、個人や企業なくして経済だけあるといったことはあり得ない。したがって、日本経済に活力がないということは、経済を支える企業に活力が不足していることである。だから、経済成長戦略は企業成長戦略と言い換えることができるし、国民の豊かさ増進も企業がもたらす雇用賃金の増加の結果に他ならない。

 では、どのような政策が企業に活力をもたらすかと言えば、それは法人税引き下げ、規制緩和などによる企業下支え策である。また、企業の新陳代謝を促す市場メカニズムの一層の徹底なくしては、厳しいグローバル競争がある下では企業の競争力が低下しかねない。企業に対する競争政策なくしては、いくら政府が立派な新産業育成を掲げ、その旗振りをしても、企業の多くがついていけないことになりかねない。

 確かに、市場メカニズムの徹底は格差拡大をもたらす。だから、セーフティネットの整備や所得再分配を通じて格差是正を図る社会保障の充実は欠かせない。しかし、市場メカニズムを忌避するばかりでは、グローバル化している世界経済の中で取り残されるのみならず、国民の豊かさ維持も難しくなりかねない。

強い政治的意思を示せ

 このように見てくると、今回発表された「新成長戦略(基本方針)」の基本方針のポイントが見えてくる。それは、日本経済と国民の豊かさに対する政府の姿勢である。国民の豊かさの増進が分配だけで実現されるものではないことは、旧ソ連圏の社会主義国経済が破綻したことから明らかだ。


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