2024年12月19日(木)

田部康喜のTV読本

2016年8月28日

 フジテレビとその系列の東海テレビは、ゴールデンタイムと深夜帯という放送時間帯が異なっているとはいえ、広告代理店の女性部長を主人公にしている。

 「営業部長 吉良奈津子」の主人公・奈津子役には松嶋菜々子、「ノンママ白書」の土井玲子には鈴木保奈美が起用されている。

 企業の常識からいえば、部長とは「ガラスの天井」を突き抜けた人材である。しかしドラマはそれでもなお、ふたりに果敢な競争に挑ませて、その悩みを描いていく。

社会で働く女性たちの姿を捉えられているのか

 吉良奈津子(松嶋)はコマーシャルを制作する優秀なクリエィティブ職だった。産休明けに、当然のごとく前の職に復帰できると思っていたところ、営業開発部の部長に抜擢される。 この裏には常務の斎藤良一(石丸幹二)の陰謀が絡んでいることが明らかになってくる。部下たちの間にも策謀が渦巻いている。

 「ノンママ」の玲子(鈴木)は子どもを作らずに仕事にまい進しようとして、夫に去られる。部長となって、管理職として直面するのはセクハラ、パワハラ問題など、本来の仕事に没頭できない。当面の課題は「ワーママ推進プロジェクト」である。働く女性を支援するために、企業を巻き込んでいこうというものである。

 いきつけのバーで、同年代のノンママのフリーライター・葉山佳代子(渡辺真起子)と未婚のノンママで人事部で働く大野愛美(菊池桃子)と3人で、愚痴をこぼし合う。このシーンで「逆パワハラ」など、言葉の解説が字幕で流れる。

 テレビ局からすれば、広告代理店は自らの経営を支えるCMや事業などのパートナーである。身近な存在であることが、その実態を知っていることにはつながらない。対象が近すぎてかえって実態がみえないことはよくあることである。

 視聴率競争に追い込まれて、社会で働く女性たちの姿を見失ってはいないだろうか。

 奈津子(松嶋)と玲子(鈴木)が行き着く先には、観客のカタルシスがあるのだろう。そもそも、ふたりの生き方に共感する現代の女性はどれほどいるのだろうか。

  
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