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2016年11月2日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 この「8・10ペーパー」はJALに対して5年間のいわば“謹慎処分”を定めたものに等しく、12年2月に社長に就任した植木義晴氏は記者会見の度に「わが社は拡大路線で失敗したことがあるので、どこかの会社のように拡大路線は取らない」と繰り返し発言、「8・10ペーパー」の定める国交省の監視下にある間は控えめな姿勢を堅持してきた。人件費の増加や熊本空港閉鎖の影響などで4-9月期決算が減収減益となったJALの植木社長は31日の記者会見で「『8・10ペーパー』は来年3月以降になくなると理解している、4月以降のことは17年度以降の中期経営計画の中で練っていく」とだけ述べた。

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JALを抜いたANA

 一方のANAはJALが“謹慎”している間に国際路線を着実に拡大、15年度の旅客輸送実績では、年間の国際線旅客数ではANAが初めてJALを上回った。同年度の旅客数はANAが816万人、JALは808万人で、搭乗率実績でもANAがJALより高かった。ANAはこの実績をバックに今回は羽田発ニューヨーク路線を獲得、国際線でさらに優位に立とうとしている。同日の決算発表では、ANAの業績は全体の売り上げは減少したが、国際線がけん引する形で利益が増加、営業利益は前年同期比3.2%増の895億円で過去最高となった。

 ANAの首脳はかねてから、「8・10ペーパー」に解釈について、「来年4月になったからといって、JALが自由に何でもできるというのはおかしい。何らかの抑制がなされるのが自然なのではないか」と述べるなど、4月以降にJALが拡大路線を取ることをけん制していた。これに対しJAL側は「需要があるところには適切な路線設定をしてもらいたい」と述べるなど、“謹慎”が解ける来年4月以降の羽田発の同路線の獲得に強い意欲を示している。「8・10ペーパー」の来年4月以降の解釈をめぐって、早くも鞘当てが始まっていた。こうした情勢を受けて、国交省のどう判断するかが注目される。

 羽田発のニューヨーク路線にはアメリカン、ユナイテッド、デルタ航空など米国の大手航空会社も路線獲得を狙っている。中でもデルタは羽田―ニューヨーク路線の獲得を強く主張してきたが、結局認められなかったため、この10月末から成田発ニューヨーク便を廃止した。その代わりに米国本土から中国の上海などへの直行便を増やす方針で、日本よりも中国にウエートを置くよう方針転換した。

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