自民党農林部会長で農協改革の旗振り役の小泉進次郎氏が都内で講演し、「安全にかかわる農産物の国際認証(グローバルGAP)を取得することが日本の農産物のブランド化につながり、農産物の輸出拡大にもなる。今年から国際認証の取得に向けて取り組まないと、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックの開催時に提供する食材に間に合わない」と強調、国際認証の獲得に向けて全力で後押しする考えを明らかにした。20日に開会する通常国会では「8本の農業改革関連法案を提出するが、自民党がまとめた『農業競争力強化プログラム』に盛り込まれた内容を実行、フォローアップしていく。今年の1年は農政新時代の礎を作る年だ」と述べた。
オリンピックの調達基準
この3月に東京オリンピック開催時に提供される食の調達基準が決まる。この中では①オーガニック(有機)食材②農業と福祉が連携し、障害者を雇用して生産している食材③国際認証を得ている食材―が優先的に使われることになる。オリンピック期間中の1カ月と2週間に必要な食料は1500万食で、このうちどれだけを日本の農産物で賄えるかが課題になっている。
オーガニック食材は日本では農産品の0.4%しかなく、国際認証を受けた農産物をどれだけ出せるかにかかっている。国際認証には最も高いレベルのグローバルGAP、その次の段階の日本版GAP(JGAP)アドバンス、JGAPベーシックの3種類がある。国際的に信用力のあるのがグローバルGAPだが、日本でこの認証を得ている農家・団体は399しかない。JGAPは約4000あるが、全体の農家と農業団体の数からすると圧倒的に少なく、農産物の国際化に向けての取り組みを怠ってきたツケがきている。
国際認証を取得するためには、栽培の生産工程管理での安全性が求められ、農薬や肥料について厳しい使用制限があり、水や土壌の安全性や環境への影響も問われるなど、細かい規定をいくつもクリアしなければならない。
小泉氏は「今の状態では、この調達基準を満たした国産の農産物を東京オリンピックで十分提供できない。JAグループにもこの取り組みを積極的に進めるようお願いしている。国産小麦をパンの原料に使うならば、今年中に国際認証を取得して、来年に作付けしないと間に合わない」と、急いで取り組む必要性を訴えた。福岡県久留米市の農家ではサラダ菜を栽培している地域があるが、農家全員がJAの支援も得てグローバルGAPの資格を取得しているという。「個人で取得しようとすると難しいが、皆でやろうとすればできる。このように国際認証の取得件数を着実に増やすことで、農産物のブランド化につながる」と指摘、将来的には農産物の1割は国際認証を得た農産物にしたいという。
国際認証の取得はこれまで農家への認知度が低く、①取得に多額の費用が掛かる②外国基準で書類の翻訳が難しいーなどの障害が指摘されていたが、JAなどの支援もあって少しずつ取得の輪が広がってきている。