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2017年1月16日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

輸出増の「パスポート」

 現在、農業高校でグローバルGAPを取得しているのは、リンゴ栽培の青森県立五所川原農業高校だけ。小泉氏は「五所川原高校はこの認証をわずか5カ月で取った。やればできることを証明してくれている。すべての農業高校でグローバルGAP取得を必修にさせたい」と意気込んでいる。

 日本の農産物の輸出は、20年に1兆円にすることを目標に伸びてきており、15年の農林水産物・食品の輸出額は7452億円となり、3年連続で過去最高を記録している。しかし世界的にみると、輸出額の国別順位では60位にとどまっている。農業生産額では世界10位ではあるが輸出額はまだ小さい。国際認証のグローバルGAPはEUに輸出するためにはなくてはならないもので、小泉氏は「国際認証は輸出を増やすための『パスポート』だ。今後30年かけてこの国際認証という『パスポート』を増やしていけば、輸出額トップテンに入れる。2050年ごろには農産物のグローバルGAP取得は当たり前になってくるのではないか」と述べた。

 また、農産物輸出を促進するため、年度内に輸出に特化した組織を立ち上げる。ジェトロを活用し、将来的には民営化する方向。この組織を使って限界集落で細々と生産されている農産物をブランド化して、世界の消費者向けに売れるようにすることが目標だという。フランスのカマンベールという小さな町で作られたチーズが世界的なブランドになったように、この組織を活用して「日本のカマンベール」を作るのを応援する。

風評被害軽減にも

 国際認証取得の流れを強めるためには、流通、小売りの協力が不可欠だ。福岡県の西鉄ストアのスーパーの売場には、国際認証を取得した農産物専用の棚が設置してある。地元スーパーも国際認証を得た農産物を応援しようという体制になってきている。石川県にあるイオングループの農場のイオンアグリ創造は、安全な農場経営が認められてグローバルGAPを取得、流通大手にも取得の動きが出ている。

 国際認証の獲得は、農産物の風評被害に悩む福島県の復興にもつながる。消費者庁の調査によると、福島県産の農産物を食べたくないという人の比率が下げ止まっており、風評被害が残っているという。このため、小泉氏は「福島県産の農産物を国際認証を取ったという環境に置けば、認証を獲得した農産物ということで引き合い来て、真の風評被害を減らせる」と指摘、復興を促進するためにも国際認証の取得は意味があるとみている。

  
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