1932~33年 油彩
憂いのある叙情的な美人画を描いて、大正時代から昭和にかけて一世を風靡した画家、竹久夢二。その生涯は多くの恋で彩られており、恋人との逃避行など、旅を重ねる“漂泊の人生”でもあった。
夢二は数え年48歳のとき、父親との死別や愛の破局、仕事の低迷などを断ち切るように、憧れの地、欧米へ旅立った。昭和6(1931)年5月、横浜港を出発し、アメリカのカリフォルニア州を中心に約1年3カ月間滞在。その後、ヨーロッパに向かい、ドイツを拠点にヨーロッパ各地を1年かけて廻った。しかし、この欧米旅行は夢二にとって快適な旅ではなかったようだ。世界恐慌、金銭的苦境や持病である結核症状の悪化などから、心身ともに疲弊しきった彼は、帰国して1年後にその生涯を閉じるのである。
今回の展覧会は、長い間行方不明となっていた欧米旅行中の素描作品や油彩画などがまとめて紹介される、いわば「幻の帰国展」。素描作品の中には、最後の恋人といわれた少女ナズモや、各地で出会った青い目の女性たち、ヨーロッパへ向けて出航したタコマ号の船旅の寸景、街の風情などが映し出されている。また、ウィーンで描かれた油彩画「扇をもつ女」が日本初公開となる。
作品から漂ってくる異国情緒や哀愁をぜひ体感してほしい。
竹久夢二展 ―憧れの欧米への旅―
〈会期〉2010年4月24日~6月13日
〈会場〉滋賀県守山市・佐川美術館(東海道本線守山駅からバス)
〈問〉077(585)7800 、http://www.sagawa-artmuseum.or.jp/cgi-bin/index.cgi
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