2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年2月3日

 ワシントン・ポスト紙コラムニストのジョシュ・ロジンが、1月8日付同紙に、「トランプはオバマのアジアへの軸足移動を現実のものにしうる」との論説を寄せ、トランプのアジア政策の今後を論じています。要旨、次の通り。

(iStock)
 

 トランプの外交についての議論は、テロとロシアとの関係に焦点を合わせている。トランプはアジア専門家を上級ポストに指名していない。米国の太平洋の同盟国は、アジアがホワイトハウスの優先順位のどこに来るのか、懸念している。

 しかし、政権移行チームは自分自身のアジアへの軸足移動を準備している。この政策は過去の共和党政策をベースにし、かつアジアでの米国のプレゼンスを強化するとのオバマ政権の願望を現実にするものである。トランプ政権は中国についてタカ派であり、地域同盟の強化や台湾に関心を持つ。北朝鮮との関与に否定的で、太平洋での米海軍は強化するという。

 アジアが第一の関心事項になる兆候がある。国務長官候補のティラーソンは上院議員との会合で中国への懸念を提起、特に南シナ海での軍事化と拡張に対抗する必要を明確にした。スティーブン・バノン上級顧問は太平洋艦隊の元海軍将校としてアジア戦略に関心があり、オバマのアジアへの軸足移動が国防費不足でうまく行かなかったとしている。

 大使については、トランプはアジアでの任命をどこよりも早くしている。トランプはインド大使に、インド専門家、アシュリー・テリスを任命しようとしている。中国大使としてアイオワの知事、ブランスタッドを指名したことを中国専門家は歓迎している。日本側はハガティ大使を大きく歓迎しているわけではないが、世界の指導者の内、安倍総理を選挙後最初にトランプが迎えたことで、適切に敬意を払われたと感じている。国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長にはマット・ポッティンガー(中国で数年ジャーナリストをした)が就くとされている。NSCは小さくなる予定で、国務省と国防省のアジア担当次官補はより重要になるが、これにはシュライバー元国務次官補代理、ホワイトハウスのアジア部長をしたビクター・チャなど、ブッシュ政権の高官が検討されている。

 トランプ政権は最初の数カ月、アジアに注意を払わなければならないだろう。国家貿易会議の議長にナヴァロを任命したが、中国との経済面での衝突は早く来る。中国も米の新大統領を試してきた歴史がある。トランプは北朝鮮の核・ミサイル計画を止めると約束している。金正恩政権への支援をしている会社への追加制裁も検討中というが、これも中国との緊張につながる。

 オバマのアジアへの軸足移動は期待が高かったが、実施不足であった。トランプ政権は逆である。トランプ・チームがその計画を実施し、不必要な危機を避けることができれば、トランプはオバマが始めたアジアへの軸足移動を完成させるかもしれない。

出典:Josh Rogin,‘Trump could make Obama’s pivot to Asia a reality’(Washington Post, January 8, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/trump-could-make-obamas-pivot-to-asia-a-reality/2017/01/08/a2f8313a-d441-11e6-945a-76f69a399dd5_story.html


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