2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月26日

 12月27日付のウォールストリート・ジャーナル紙の社説が、安倍総理の真珠湾訪問を好意的に評価するとともに、優れた軍事力を持ち、アジア各国と友好な関係を保っている日本は、米国にとって最も重要な安全保障上のパートナーである、と述べています。社説の要旨は、以下の通りです。

(iStock)
 

 安倍晋三の真珠湾訪問は和解の象徴である。真珠湾攻撃から75年が経った現在、北朝鮮の核や中国の修正主義的野心に晒される太平洋において、日本は米国にとって最も重要な安全保障上のパートナーである。

 アジア太平洋における米国の同盟国5カ国のうち、日本は最も大きな経済力、最も優れた軍事力、そして最も戦略的思考のある政治的指導力を有している。安倍総理は、今回の真珠湾訪問でオバマ大統領の広島訪問に応じただけでなく、日本を米国の安全保障上のフリーライダーであるかのように語ってきたドナルド・トランプに対しても、日本の価値を示すことができた。

 日本の防衛費は、ここ数年GDP比1%程度に抑えられてきており、依然として少なすぎる。だが、安倍政権は5年連続で防衛費を増加させている。2017年度の防衛予算は前年度から1.4%の増額の5兆1000億円となり、過去最大となった。これらの予算は、米国と共同開発した新たなミサイル防衛や2021年までに潜水艦を現在の17隻から22隻まで増強する財源として使われる。海上保安庁の予算も、前年度から12%増の20億ドル近い額となった。

 日本はこれ以外にも、5万4000人の在日米軍経費として年間17億ドルを支払っている。これは駐留経費全体の半分の額だが、これらの人員を米本土に戻すとなれば、もっと多くの費用がかかる。これ以外にも、日本は太平洋地域における最大の軍事施設建設プロジェクトの一部に180億ドル支払うとしている。これには尖閣や台湾に近い日本南部での新施設の他、グアムの施設経費も含まれている。

 これらの効力をさらに増大させているのが、安倍総理の精力的な地域外交である。インドのモディ首相との間では、アジアにおける最強の民主国同士の戦略的関係を深化させたし、韓国との間では、慰安婦合意を通じて、ミサイル防衛に関する日米韓3カ国協力など前例のない協力の道を開いた。東南アジア諸国へのアウトリーチでは、中国の圧力に脆弱な国に対して、経済・軍事近代化のための支援を提供している。フィリピンのドゥテルテ大統領とでさえも、安倍総理は良好な関係を維持している。

 この他にも、安倍総理は台湾に好意的である他、長らく保護主義的であった産業に外資が参入する余地も与えている。米国がアジアにおいていかなる戦略的ゴールを描くとしても、日本はそれに協力する意思を強めているのである。

 2015年の米議会での演説や今回の真珠湾で、安倍総理がこれらの事実をドラマチックに強調したことは称賛に値する。11月に行われたトランプ次期大統領との会談も和やかなものであった。これはアジアにおける平和と繁栄にとってよい兆しである。

出 典:Wall Street Journal ‘A Friend for Trump in Asia’ (December 27, 2016)
http://www.wsj.com/articles/a-friend-for-trump-in-asia-1482882684


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