2024年11月25日(月)

こんな子 こんな時 こんな絵本

2010年6月3日

 こんにちは、安冨ゆかりです。書店や病院、イベント会場などでの読みきかせ活動を通して、絵本の世界を子どもたちと一緒に愉しんでいます。これから少しの間、読みきかせや絵本の紹介をさせていただくことになりました。

 ゴールデンウィークの前後に、ショックな内容とうれしい報告二つの記事を目にしました。一つはインターネットで、一つは新聞記事。どちらも、読み聞かせの活動を通して、子どもたちと絵本を楽しんでいる身には、無視できない内容でした。

浦島太郎はアンパンマンに乗って竜宮城へ?

昔話の定番、「桃太郎」の「お腰につけたきびだんご」を知らない子どもたちがたくさんいるという。(『桃太郎』 松井直・文 福音館書店)

 ショックな内容の記事は、大学教授らのグループが平成2年から10年ごとに、子どもと21の童話・昔話との関わりを、幼稚園児を対象に調査した結果です。今の子どもたちが昔話を知らない、というのはよく耳にすることですが、20年間の変化を数字で提示されて、改めて愕然としました。桃太郎が鬼退治のとき腰につけていったのは「きびだんご」であって、パンやケーキではありません。浦島太郎が龍宮城へいくときに乗ったのは、亀の背中であってアンパンマンではないのです。そういえば少し前、お椀の船に箸の櫂、川を下る小さな若武者といえば、「一寸法師でしょ!」の絵を見て、「桃太郎!」と言った子がいたと言う話を聞いて驚いたことを思い出しました。紹介されていたのは調査結果のごく一部でしたが、「さて、どうしたものか?」と考えざるを得ない気持ちになっています。

 記事には、親が絵本を読んだり話したりした経験や昔話絵本の所有率も大きく低下したとありました。子どもに関する出来事には、大なり小なり大人の存在が関わっていることを思うと、問われるべきは、まず大人の対応と言えそうです。

 うれしかった報告は、「本がない生活? ありえない」と答えた子どもたちの新聞記事です。「本のない生活は、今の自分と違う自分になっちゃう。」「本は人とつながるのにかかせない」とインタビューに答えたのは、小学校6年生と中学3年生。子ども読書年(2000年)、そして2001年から「子どもの読書活動推進法」が施行され、「読み聞かせ」や学校での「朝の読書」の活動が話題になり盛んになる中成長してきた子どもたちです。大人の思惑とは関係なく同じ言葉を口にしたかもしれませんが、世の中の動きがまったく影響ないこともないでしょう。うれしい成果の一つを見せてもらったように思いました。

 いまでこそ「絵本」とか「読みきかせ」が身近にある毎日ですが、正直なところ、長らく無縁のものでした。もちろん、子ども時代の本に関する思い出はありますが、成長と共に本や読書の意味合いが変わるにつれ、いつしか絵本や子どもの本は意識の外になっていました。書店や図書館に「子どもの本のコーナー」がある事すら、忘れていたように思います。


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