アジア最大のLCC(格安航空会社)のエアアジア(本社クアラルンプール)の子会社で、クアラルンプールから日本向け路線を就航させているエアアジアXの最高経営責任者(CEO)のベンヤミン・イスマイル氏は電話インタビューに応じ、LCCとして初めてとなるハワイ直行便を6月28日に就航させることについて、「低価格料金を提供することでハワイ行き旅客需要を刺激して、特に日本人の若者をより多くハワイに旅行できるようにしたい」と述べた。
新規顧客を開拓
ハワイ路線はクアラルンプールー関西国際空港―ホノルルを結ぶルートで週4便。ハワイ路線への新規参入についてイスマイル氏は「日本人が乗客の80%を占め、残りはアジア人になる見通し。ハワイは日本人の観光地として大きなマーケットなので、日本航空、全日空、デルタ航空など大手が飛ばしている路線だが、低価格で十分に需要が期待できるマーケットだ。LCCのエアアジアXが就航することでハワイの旅客需要をさらに開拓していきたい。いまのところ9月までの予約状況は順調だ」と新路線に強い期待感を示した。イスマイル氏は、低価格で大手航空会社の既存顧客を奪うよりも、「新規顧客を生み出す」点を強調した。
大手より7割安の低運賃
ハワイ路線(成田・羽田―ホノルル)は現在、日本の航空会社は約8万~10万円(エコノミー往復)の運賃で飛ばしているが、エアアジアXは当初2万5800円(往復)という格安な運賃を提供する予定で、大手と比較して約7割も安い運賃になっている。このため、飛行機代が高く、どちらかというと富裕層中心の高級リゾート地だったハワイのイメージを、同社が低価格の運賃を提供することでハワイ路線を大衆化したい狙いがある。
ハワイにこれまであまり縁のなかった若者層などが、低価格運賃の恩恵を受けてどれだけこのLCCを利用するかが注目される。また、19年春には全日空が500人以上載せることのできる大型機A380を東京(羽田か成田かは未定)―ホノルル間に就航させる計画で、ハワイ路線は同年以降に、大幅に供給が増える。その環境の中で、LCCがどこまで競争力を発揮するかも注目点の一つだ。
日系エアラインはどう見ているのか?
旅行大手のエイチ・アイ・エス(H.I.S.)は、LCCによる新規参入について「ハワイ路線は日本人に人気の路線のため運賃が10万円台と高めに設定されている。これが大幅に安くなれば、利用者の選択の幅が広がる。大学生などもハワイに行きやすくなり、利用者の裾野が広がる」と歓迎している。
これに対して、エアアジアXと同じ関西空港からホノルル路線を飛ばしている日本航空は「LCCの乗客と大手航空の乗客は求めるサービス内容が違うので、低運賃を脅威には思っていない。日本航空の関空―ホノルル路線には座席を新しくしたエコノミークラスを提供し、LCCとは異なるサービスを提供している。LCCには低運賃によりハワイに初めて訪れるような顧客を開拓してもらえばよいのではないか」と話し、LCCの乗客との棲み分けを指摘している。
大手航空会社はプライドもあるせいか、LCCを競争相手とは見ていない。しかし、関空―ホノルル路線の搭乗率80%を目指すエアアジアXの目論見がハイシーズンを迎える今年の夏に実現すると、大手と言えどもうかうかはしておられなくなるのではないだろうか。