2024年11月22日(金)

No Science, No Business

2010年9月3日

 その意味では、内燃自動車から電気自動車へのシフトは、もっとも起こりにくいものの一つと言って良いかも知れない。

 しかし、温暖化があーだこーだいわれ、これからは太陽エネルギー系の発電や風力発電を盛り上げていこうという昨今の風潮からして、電気自動車の普及もようやくリアルな道筋が見えてきたようだ。電気自動車を作り上げるための技術だけでなく、周りの環境にその変化を可能にする兆しが出てきたわけだ。

 たとえば、内燃自動車は、化石燃料を精製してガソリンに変え、輸送し、エンジンで燃やして動かすまでのエネルギー効率は10パーセントに満たない。

 これに対して、電気自動車は化石燃料から発電、送電して、充電池でモーターを動かすまでのエネルギー効率が35パーセントほどになると試算されている。つまり、それだけ化石燃料を無駄にしない。当然、トータルの炭酸ガス排出量も少なくなる。

 また、走行に必要な燃料のコストもかなり安くて、電気なら同じ値段で化石燃料の10倍近い距離を走ることができる。

 電気自動車は、モーターとバッテリーとインバータさえあれば作れるので、これまでの自動車メーカーの優位性はなくなる、なんてことを言う人もいる。

 また、電子化が進んだことで、それまでは精密「機械」メーカーの製品だったカメラの分野に、電気電子メーカーが大量に参入してきたように、これまでは自動車と無縁でも、技術開発力は充分にあるメーカーが、電気自動車の分野に参入するようなことは、ほぼ確実に起きるだろう。

 でも、どうなんでしょうね。

 たしかに、ゴルフカートみたいな電気自動車なら、それほど技術の積み重ねがなくても作れるとは思う。また、既存の車の中身を取り換えて、電気自動車に改造するサービスも行われていて好評らしい。

 でもそれだけでは、T型フォード以来100年の量産の歴史がある既存の内燃車に、正面から太刀打ちできるとは思えない。それらは、多少の話題を集めても、あくまで過渡期のニッチ的な存在に留まるだろう。

 将来的にはともかく、今現在の内燃自動車が圧倒的な生態系の中で、電気自動車が勢力を伸ばしていくとするなら、それはある程度以上の実績ある内燃自動車のメーカーが、覚悟をきめてやるしかないだろう。

 今年の4月、日産は12月に発売を予定している電気自動車、リーフの予約を開始した。

 このとき、社長のゴーンさんは、「我々は今後、世界最大の電池メーカーになる」と語っている。このアジェンダって面白い。これって、これから世界を変えていくキーワードの一つかも知れない。

市場拡大のさきがけ 日産「リーフ」

今年12月に発売される「リーフ」。予約受注は日産の予想を上回る数。

 リーフは、モーター前置きの前輪駆動で、5人乗り、最高速度は時速140キロ以上。航続距離は、LAモードで160キロと発表されている。

 ちなみに、LAモードとは、ロサンゼルス市街地での平均的な走りを基準にした航続距離のことで、ノートパソコンの「JEITAバッテリ動作時間測定法」と同じようなものと考えればいいだろう。これは日本の内燃車の基準「10・15モード燃費」よりきつい条件で測っているといわれている。

 誰もが思う電気自動車に対する最大の心配事は、バッテリーが切れたらどうしようということだ。しかし、これだけの容量があれば、基本的に日常の市街地走行で困ることはなさそうだ。
リーフは、乗心地も極めて良いらしい。

 とくに加速性能やハンドル操作は、これまでのガソリン車を越えるようだ。リーフはファミリーカー・サイズだけど、日産の他の車種でいうと、スカイラインやフーガなど、に近い走行性能で、そのきびきびした走りは、乗った瞬間にわかるとのこと。まあ、オレは乗ってないので、ホントのところはわかりませんけどね。

 ただ、電気自動車には、素性として、そういうものが作れるポテンシャルがある事は間違いない。

 まず、電気自動車は、モーターで動く乗り物だから、原理的に加速性能を高めやすい。

 モーターは、回転数が少ない時ほど大きな電流が流れて強い力が出るからだ。


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