タイトルだけで注目してしまう本である。最近、確かに、一部のネットメディアでは、動物の写真や動画を多用して読者の目を引こうとする傾向が顕著にある。しかしそれを本書のようにジャーナリズムの変容と気付かなかった自らの不明を恥じるところだが、個人的にはどんなニュースもネコには勝てないな、とも思ってしまう。ジャーナリズムの側面からは納得できない面も多く、劣化している証拠と懸念する向きもあるだろう。インターネットが登場して約20年がたつ今、ネットメディアをどうみれば良いのかを率直かつ骨太に分析したのが本書である。
変化する「ニュース」の概念
著者は大手新聞の記者を経てヤフーに入社し、現在はヤフー傘下のTHE PAGE(ザ・ページ)というニュースサイトを運営するネットの世界を知り尽くした人である。
その人がいまのネットメディアをどう見ているのかというポイントが本書の中で紹介される。それらはきわめて明快だ。端的に言えば、ネットの登場とその後の進化がメディアの質や風景を明らかに変えているということである。
〈2017年の現在、30歳から40歳以上の世代は、インターネットが登場する前から存在していた新聞やテレビ、出版といった伝統メディアと、ネットメディアを中心とする新興メディアの両方の変化を身近に感じてきました〉
〈ただ、1995年より後に生まれた若者たちは、物心ついたときにはすでにインターネットが使える環境にありました。〜中略〜 彼らは経験として、伝統メディアに接してきた時間が相対的に短かったこともあり、インターネットの何がそれほど画期的な変化をもたらしたのか、実感する機会が少なかったようです〉
ネットが登場してからこれまで、メディアを変えるエポックはいろいろあった。紙の新聞や雑誌が読まれなくなってきたのはその流れの一つであるだろうし、2008年頃からのソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)の本格的な展開が、スマートフォンの登場と相まって大きく流れを作ったのもその一つだろう。
そうした中、ニュースという言葉の概念が大きく変わってきたというのが著者の考え方だ。わかりやすく言えば、以前の「ニュース」という言葉に人々が感じていたイメージや価値観は、いまのそれとは異なっているという問題意識である。