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目次・見どころ
特集
昭和を引きずる社会保障
崩壊防ぐ復活の処方箋
「失われた30年」
“平成”という時代を総括するときにしばしば用いられるこの言葉にはどこか、“昭和”という時代を礼賛する響きがある。
たしかに、敗戦後の焼け跡から国を再興し、経済面では、世界首位の米国に肉薄した輝かしい時代だった。そして、バブル崩壊によりその輝きが手からすり抜ける悔しさを味わった時代でもあった。
高度経済成長期の幻想を追い求め続けた「平成」が終わり、「令和」の時代が幕を開けた今、我々は新たな日本の未来を描くべきだ。
今や国の基盤となった「社会保障制度」も昭和の時代に形作られた。1946年(昭和21年)公布の日本国憲法に「社会保障」という言葉が用いられたことでその概念が広まり、昭和30〜40年代の国民皆保険・皆年金の整備、老人医療費の無料化、児童手当の創設等により制度拡充が図られた。まさに、人口増加と経済成長を下支えに「風呂敷を広げた」時代である。
「福祉元年」と呼ばれ、現在の社会保障制度体系がほぼ整った73年(昭和48年)、第一次オイルショックが勃発し、高度経済成長は終焉に向かう。それから今日に至るまで、年金制度へのマクロ経済スライドの導入や、高齢者医療費の自己負担率引き上げなど、様々な制度見直しを迫られた。特に、少子化による負担者の減少と、平均寿命の伸びによる給付額の増加は、制度創設当時には想定しきれなかった事態といえる。
2008年をピークに、日本の総人口は急降下を始めた。現在約1億2500万人の人口は、2100年には6000万人を下回り、半分以下となる見込みだ。人口増加を前提とした現行の社会保障制度は既に限界を迎えている。昭和に広げすぎた風呂敷を畳み、新たな仕組みを打ち出すときだ。
社会保障に「特効薬」はない。だが、昭和的価値観から脱却し、現状を受け入れることで、その糸口が見えてくる。これから示す「処方箋」が、新たな時代の社会保障へとつながっていくことを期待する。(文・編集部 川崎隆司)
Part 1 介護
介護職員が足りない! 今こそ必要な「発想の転換」
編集部
Part 2 人口減少
新型コロナが加速させた人口減少 “成長神話”をリセットせよ
森田 朗(東京大学名誉教授)
Part 3 医療
「医療」から「介護」への転換期 “高コスト体質”からの脱却を
土居丈朗(慶應義塾大学経済学部教授)
Part 4 少子化対策
「男性を家庭に返す」 これが日本の少子化対策の第一歩
山口慎太郎(東京大学大学院経済学研究科教授)
Part 5 歴史
「人口減少悲観論」を乗り越え希望を持てる社会を描け
鬼頭 宏(上智大学経済学部名誉教授)
Part 6 制度改革
分水嶺に立つ社会保障制度 こうすれば甦る
島澤 諭(中部圏社会経済研究所研究部長)
COLUMN 高齢者活躍
お金だけが支えじゃない 高齢者はもっと活躍できる
編集部
Part 7 国民理解
「国家 対 国民」の対立意識やめ真の社会保障を実現しよう
西村周三(京都先端科学大学経済経営学部教授)
特集
- ■WEDGE_OPINION 1
- こんなに違う中国とベトナム 日越関係、さらに強化を
- 梅田邦夫(株式会社日本経済研究所上席研究主幹)
- ■ WEDGE_OPINION 2
- 未来を担う子どもたちのため 読解力育成は大人の責務
- 向山行雄(敬愛大学教育学部教授・教育学部長)
- ■WEDGE_OPINION 3
- 学術会議の知られざる真実 軍事忌避を金科玉条にするな
- 勝股秀通(日本大学危機管理学部教授)
- ■WEDGE_REPORT 1
- インテル vs TSMC 半導体ウォーズの勝者はどちらか
- 杉山和弘(OMDIAコンサルティングディレクター)
- ■WEDGE_REPORT 2
- 責任の押しつけ合いやめ電力危機回避へ国が前面に立て
- 編集部
- ■WEDGE_REPORT 3
- 自動車メーカーとIT企業がEV普及へと導く“鍵”とは
- 池田直渡(自動車経済評論家)
- ■INTERVIEW
- 加速するモノづくりのオープン戦略 日本の強み生かす時
- 加藤真平(ティアフォー創業者兼最高技術責任者)
- ■NEWS_TOPICS
- 米国の対中認識は不変でも 経済摩擦は持久戦の様相へ
- 大西康雄(科学技術振興機構特任フェロー)
- 新連載
- ONCE UPON A TIME by 生津勝隆
- 住
連載
- インテリジェンス・マインド by 小谷 賢
- 世界の情報を牛耳るファイブ・アイズってなんだ!?
- イノベーションを阻む“法律たち” by河村 光
- コロナ禍で注目されるオンライン服薬指導
- MANGAの道は世界に通ず by 保手濱彰人
- 『キングダム』が教えてくれる兵法の極意
- 社会の「困った」に寄り添う行動経済学 by 佐々木周作
- 部下の仕事のマネジメントで困った
- 新しい原点回帰 by 磯山友幸
- 品質第一の“タネ” 戦前からのグローバル企業の開発力 〜サカタのタネ〜
- CHANGE CHINA ~中国を変える“中国人”~ by唐辛子
- 一筋の光として社会的弱者の女性救うプロボノ弁護士 郭 建梅
- 近現代史ブックレビュー by 筒井清忠
- 『二〇世紀ナショナリズムの一動態』 木下宏一
- さらばリーマン by 溝口 敦
-
現場主義貫く手探り人生 転職繰り返しドローンの世界へ
木村 基さん(アーク代表取締役)
- 時代をひらく新刊ガイド by 稲泉 連
- 『縁食論』 藤原辰史
- 背負うということ by 木村俊介
- 前統合幕僚長 河野克俊
- 世界の記述
- 各駅短歌 穂村 弘
- 拝啓オヤジ 相米周二
- 一冊一会
- 読者から/ウェッジから
2021年5月号
2021年4月20日発売
定価550円(税込)
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「失われた30年」
“平成”という時代を総括するときにしばしば用いられるこの言葉にはどこか、“昭和”という時代を礼賛する響きがある。
たしかに、敗戦後の焼け跡から国を再興し、経済面では、世界首位の米国に肉薄した輝かしい時代だった。そして、バブル崩壊によりその輝きが手からすり抜ける悔しさを味わった時代でもあった。
高度経済成長期の幻想を追い求め続けた「平成」が終わり、「令和」の時代が幕を開けた今、我々は新たな日本の未来を描くべきだ。
今や国の基盤となった「社会保障制度」も昭和の時代に形作られた。1946年(昭和21年)公布の日本国憲法に「社会保障」という言葉が用いられたことでその概念が広まり、昭和30〜40年代の国民皆保険・皆年金の整備、老人医療費の無料化、児童手当の創設等により制度拡充が図られた。まさに、人口増加と経済成長を下支えに「風呂敷を広げた」時代である。
「福祉元年」と呼ばれ、現在の社会保障制度体系がほぼ整った73年(昭和48年)、第一次オイルショックが勃発し、高度経済成長は終焉に向かう。それから今日に至るまで、年金制度へのマクロ経済スライドの導入や、高齢者医療費の自己負担率引き上げなど、様々な制度見直しを迫られた。特に、少子化による負担者の減少と、平均寿命の伸びによる給付額の増加は、制度創設当時には想定しきれなかった事態といえる。
2008年をピークに、日本の総人口は急降下を始めた。現在約1億2500万人の人口は、2100年には6000万人を下回り、半分以下となる見込みだ。人口増加を前提とした現行の社会保障制度は既に限界を迎えている。昭和に広げすぎた風呂敷を畳み、新たな仕組みを打ち出すときだ。
社会保障に「特効薬」はない。だが、昭和的価値観から脱却し、現状を受け入れることで、その糸口が見えてくる。これから示す「処方箋」が、新たな時代の社会保障へとつながっていくことを期待する。(文・編集部 川崎隆司)
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