メキシコのグアハルド経済相は、日本記者クラブで講演し、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉やTPP(環太平洋経済協定)交渉の行方について講演した。TPPの交渉に関しては「日本とメキシコはTPP交渉を妥結させるゴールを共有している」と指摘、米国が離脱したTPP交渉を早期に妥結させたい姿勢を示した。NAFTA再交渉によるメキシコで現地生産している日系自動車メーカーや部品会社への影響については「NAFTAの再交渉は日本にとっても重要な意味がある。日系企業の現地調達比率は最高の水準になっており、現地との統合が進んでいる。このため、日系企業の生産プロセスを阻害するような再交渉にはならないよう約束する。再交渉する際には日本の関係者としっかり協議をしながら進める」と強調、メキシコに進出した日系企業に配慮する姿勢を示した。
政治日程が影響
トランプ米大統領が「米国第一主義」を掲げて保護貿易的な政策を展開していることについて「日本とメキシコ両国は世界の新たな通商政策に直面しており、新しい戦略を考えなければならない。しかし自由貿易を維持しなければならない」と述べ、米国の通商政策とは一線を画す姿勢を示した。
USTR(米通商代表部)が17日にNAFTA再交渉に向けて交渉リストを米国議会に示したことについて「ようやく8月から交渉が始まるトリガーになった。交渉項目の中に、関税、貿易を歪曲させるクオーター(枠)を入れてこなかったのはプラスだ」と言及した。一方で、リストの中に貿易赤字削減の項目が盛り込まれたことに関して「貿易を制限するのではなく拡大するという中で、貿易均衡を考えるというのであれば、貿易赤字を見直す用意がある」と指摘した。
交渉がいつごろまでに終結するかは「メキシコは来年夏に大統領選挙が、米国は来年11月に議会選挙が控えており、この2つの政治日程が大きな要素になる。可能な限り早期に集結したいので、来年の早い時期に取りまとめができるかもしれない。しかしこれがデッドラインではない」と述べ、政治日程の影響を受けざるを得ないとみている。
TPPの11月妥結は困難
11カ国で交渉することになったTPPについて「日本滞在中に世耕弘成経済産業相らとTPPのターゲットに対してどのように向かうかについて協議した。メキシコにとってTPPはアジアの自由貿易圏を作る際の橋渡しになる。2005年に自由貿易協定を締結した日本との関係を進化させることができ、経済が成長しているアジアとのつながりができる」と指摘、交渉の意義を強調した。11月にベトナムで開催が予定されているTPP首脳会議については「11月までに交渉を妥結するということではなく、参加国の首脳に対して、11カ国で交渉することになったTPPの共通の定義を示し、どこまで合意できるかどうかがポイントだ」と述べ、11月の首脳会議でのTPPの交渉が合意するのは時期尚早との見方を示した。