WEDGE REPORT

2017年7月26日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

日系企業の進出増える

講演したメキシコのグアハルド経済相(日本記者クラブ提供)

 日本とメキシコとの貿易関係について「自由貿易協定が締結してからの12年間に、両国間の貿易額が倍増し、日本からの投資も増えて大きなインパクトがあった」と述べた。トランプ米大統領が大統領に就任して「米国第一主義」を掲げたことで、日本企業のメキシコへの進出にブレーキが掛かるのではないかと心配されたことについては「現在、日系企業の進出数は1111社に増えており、自動車部品会社のリンクが強まっている」と強調、進出数は減っていないとの見解を明らかにした。

 トランプ大統領は就任した直後に、米国以外のメキシコなどに工場を建設しようとする企業に対して、どう喝するかのような発言が相次いだことから、日本企業の間にはメキシコへの工場進出や投資を手控える動きも出ていたが、進出企業数が増加していることからみると、当初の予定通り投資を行っているようだ。

500万台を目標

 メキシコの自動車産業政策については「20年までに年間生産台数を500万台(16年は約346万台)に引き上げる国家として強い目標を掲げている。これが達成できれば、世界5位の生産能力を持つことになり、生産台数を増やせば競争力を高めることができる。アルゼンチンやブラジルなどの新しいマーケットを拡大し、欧州市場とのつながりも強化する。NFTAとの再交渉ではこの産業政策を変えずに堅持する」と述べ、自動車生産国としてのプレゼンスを高める姿勢を鮮明にした。

 自動車部品企業のメキシコ進出については「日系企業のTier1からTier3まで統合が進んでおり進化している。日本だけでなく、デトロイトの自動車メーカーも、メキシコでの部品生産によりグローバルな統合が進んでいる」と指摘、メキシコでの部品生産を抜きにしては自動車メーカーのグローバルな生産体制は維持できないとの考えを示した。

 自動車部品の現地調達に関して「メキシコで生産される自動車の米国とカナダの自動車部品の現地調達率は40%にもなっており、北米ではメキシコと米国、カナダの間に強いリンクが張られている。再交渉するにしても、これらが弱まらない形で交渉することになる」と述べた。

国境に壁は作らない

 トランプ大統領が主張してきた米国とメキシコとの国境添いに壁を作ることについては「ペニャニエト大統領が言っているように壁を作っても良いことはない。問題は不法な人、麻薬、武器の密売など非合法な取引を防ぐことだが、これは壁を作っても解決できない。これはインテリジェンスを使った戦略的な行動によらなければ解決しない」と指摘、壁の建設には反対の姿勢を示した。その一方で「合法的な人、貿易の流れは促進したいということでは両国の当局は協力している」と述べた。

  
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