2024年12月23日(月)

ベストセラーで読むアメリカ

2010年9月14日

■今回の一冊■
THE OBAMA DIARIES
  筆者Laura Ingraham, 出版社Threshold Editions, $25

 またまた、反オバマ本がアメリカ全土の書店で売れている。保守派の政治評論家が書いたオバマ政権に対する批判の書だ。ユニークなのは、オバマ大統領をはじめ、その夫人や側近たちの日記が謎の男から筆者のもとに届けられたので、出版してオバマ政権の実態を暴くという告発の書の体裁をとっている点だ。もちろん、引用されている日記の部分は、筆者の手になるフィクション。本書の基本は、オバマ大統領の外交政策や国家観、経済政策を批判する論評である。

 まず筆者は、オバマ大統領が外遊するたびに各地で、これまでのアメリカの自分勝手な国際政治での振る舞いを謝罪しすぎると批判する。そもそも、アメリカという国に対する尊敬の念がオバマ大統領には足りない、とまで言う。そこでまず、自らのアメリカに対する思いを高らかに宣言する。

 To me, America will always be a land of unbridled opportunity, unrivaled beauty, and unlimited possibility. It is a place where each of us has a shot to reach our potential. Rooted in truth, decency, and timeless values, America is ever forward looking; constantly innovating while inspiring the rest of the world. (p2)

 「私にとって、アメリカとはこれからも、豊かなチャンスと比類なき崇高さ、限りない可能性の地であり続ける。みんなが自分の可能性を試す機会を与えられる大陸だ。真実と謙虚さ、不朽の価値に根ざしながら、アメリカは未来を見つめている。常にイノベーションを起こし、世界の他の国々を導いていくのだ」

 保守派に限らず、アメリカ人は自分の国に対する誇りが高いことをうかがわせる一節だ。オバマ大統領の核軍縮への取り組み姿勢も次のように槍玉に挙げる。

 Consider, for example, President Obama’s statement that the United States has a special responsibility to restrain the spread of nuclear weapons because we are “the only nuclear power to have used a nuclear weapon.” Such a phrase leaves the impression that President Truman dropped a couple of A-bombs on Hiroshima and Nagasaki just because he could-that Americans were indifferent to the massive destruction of life resulting from nuclear weapons. You wouldn’t know that U.S. policymakers were trying to end a devastating war that we did not start, one that had already resulted in the deaths of more than four hundred thousand Americans, and that threatened to continue for years if we were forced to invade Japan. (p228)

 「例えば、次のオバマ大統領のコメントをみて欲しい。アメリカは『核兵器を使用したことがある唯一の核保有国』として、核兵器の拡散を抑止する特別な義務を負っている、というのだ。こうしたコメントはアメリカにとって困った印象を与える。トルーマン大統領はなんのためらいもなく広島や長崎に原爆を投下した、つまり、アメリカ人は核兵器による大量虐殺に無関心だった、と。これでは、自分たちが始めたわけではない悲惨な戦争を止めるために、アメリカ政府がどれだけ努力したかが伝わらない。その時点ですでに40万人を超すアメリカ兵が死んでおり、(原爆を投下せずに)日本での陸上戦に突入したら戦争がさらに何年も続く恐れがあったのだ」

オバマの「歴史観」とは?

 ルース駐日大使が広島の原爆死没者慰霊式・平和祈念式に出席し、アメリカ国内で「アメリカが謝罪したと思われては困る」といった論調が保守層を中心に巻き起こったことは記憶に新しい。第二次世界大戦での日本への原爆投下に対する、保守層の典型的な考え方が明確に記されており参考になる。

 筆者はさらに、アメリカの学校教育の場でも、ゆがめられた歴史観が広められていると批判を展開する。


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