2024年5月2日(木)

ベストセラーで読むアメリカ

2010年9月14日

 Textbooks began to feature the full litany of American sins. Suddenly slavery and the harsh treatment of Native Americans became the centerpiece of U.S. history. The glories of our country’s past-the daring battles, the idealists who fought for their dreams-were soon edged out entirely. (p17)

 「教科書はアメリカの罪を満載し始めている。突然、奴隷制度やアメリカ先住民に対する残酷な仕打ちが、アメリカ史の最重要テーマになってしまった。我が国の過去の栄光、勇敢な戦いや夢のために戦った理想主義者たちが、全部押しのけられてしまった」

 たとえば、次のような歴史的な事実を生徒たちにわざわざ教えることに反対する。

 The U.S. remains the only nation ever to have used nuclear weapons on another nation. (p18)

 「米国はこれまでのところ、他の国に対し核兵器を使用した唯一の国家である」

 どこの国でも歴史教育にはさまざまな意見が出るようだ。

 スティーブン・スピルバーグやトム・ハンクスらが制作総指揮した太平洋戦争の戦場を描くテレビドラマ「ザ・パシフィック」にも筆者はかみつく。3人のアメリカの海兵隊員を主人公に、ガダルカナル島や硫黄島、沖縄などでの戦場をリアルに描くドラマだ。実はトム・ハンクスがこのドラマの制作意図について、「太平洋戦争には日本人に対する人種差別が根底にある」という趣旨の発言をし、対イラク戦争などに通じるものがあると示唆している。こうした発言は、保守派から大きな反発を招いている。筆者はアメリカの正当性に疑問符をつける歴史認識を強く批判する。

 本書では、このドラマの試写会を2010年3月にホワイトハウスで実施した日のオバマ大統領の日記(もちろん筆者の創作)も次のように掲載している。

 The highlight of the screening was when Hanks got up for his preamble and said he was amazed what Americas did to the Japanese people. He said that he and Steve wanted to dramatically show the true expressions of racism and terrorism unleashed by our soldiers at this moment in our history. I tried not to laugh when I saw the expression on the war vet’s faces. (p24-25)

 「試写会の最大の見せ場はトム・ハンクスが上映前にしたあいさつだ。ハンクスは立ち上がって、アメリカ人が日本人に対してやったことに驚いたと言った。自分とスピルバーグは、我々の兵士たちが我が国の歴史のこの時期にほとばしらせた、人種差別やテロリズムの本当の姿をドラマチックに描きたかったと言った。(試写会に来ていた)退役軍人たちの顔の表情に気づいて、私は笑うのを我慢した」

 ハリウッドはリベラル派の集まりであり、大統領選でもオバマを支持した。この日記を借りて筆者は、オバマ大統領も太平洋戦争に対する認識をトム・ハンクスらと共有していると批判しているわけだ。

「大国」でありつづけたアメリカ

 日本人としては、あくまでも自国の非を認めようとしない筆者の強硬な主張には辟易する面もある。しかし、保守派の筆者がこれだけ強硬に主張する背景には、アメリカ国内で実際に、そうした反省機運が高まっている事実があるのかもしれない。だからこそ、声高に反論を展開する必要があるのだろう。


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