2024年11月22日(金)

ベストセラーで読むアメリカ

2010年9月14日

 保守派の論客である筆者は、とにかくアメリカという国が弱みをみせることを嫌う。とにかくアメリカは絶大なパワーを振りかざして外交に臨めと説く。次の一説は、そんな強硬論の真意をよく物語る。

 We have so much wealth and power, and play such a huge role in global affairs, that almost anyone with an instinctive desire to support the underdog enjoys seeing the United States get its comeuppance. As long as the United States remains the world’s superpower, we will find it hard to win the world’s sympathy. This isn’t anyone’s fault; it’s simply human nature. The only way to solve this problem would be for the United States to lose its power-a situation in which the cure is far worse than the disease. (p245)

 「われわれがあまりにも多くの富とパワーを持ち、そして国際問題でとても大きな役割を果たしているがために、判官贔屓の人々はアメリカに天罰が下るのを喜ぶ。アメリカが世界の中の超大国であり続ける限り、世界の人々から共感を得るのは難しい。これは誰の責任でもない。単に人間の自然な感情なのだ。この問題を解決するには、アメリカがそのパワーを手放すしかない。しかし、これは病気を治すことでかえって、体調が悪くなるようなものだ」

 アメリカ人の保守派の本音が伝わってきて興味深い。そして、保守派の典型的な理想の大統領観も次のように披露する。レーガン元大統領が保守派のヒーローなのだ。

 The notion that our foreign policy dilemmas were significantly affected by President Bush’s personal popularity (or unpopularity) is incredibly naïve. Many Europeans were certainly angry with Bush over the Iraq War, but they were also furious with Reagan for referring to the U.S.S.R as the “Evil Empire,” and for pursing an aggressive policy to win the Cold War. But because Reagan’s policies were obviously successful―and because the United States clearly grew in stature under his administration― European opposition to President Reagan has been largely forgotten. On the other hand President Carter constantly talked about the importance of human rights, treated international organizations with great respect, and worked hard to bring peace to the Middle East. Like his friends Barak Obama and Al Gore, he also has a Nobel Prize. And look at his sterling foreign policy record. (p243-244)

 「アメリカの外交政策上の問題が、ブッシュ大統領の人気(あるいは不人気)に大きく影響を受けたと考えるのは、とても浅はかである。確かに欧州の多くの人はイラク戦争を起こしたブッシュに対し怒りを抱いたが、レーガン元大統領がソビエト連邦を『悪の帝国』と呼び、冷戦に勝利するため強硬策をとった時も、欧州の人たちは怒ったのだ。しかし、レーガンの政策が成功したことは明らかだったし、レーガン政権のもとアメリカが繁栄したため、レーガン大統領に対する欧州の批判はほとんど忘れ去られた。反対に、カーター大統領はいつも人権の大切さを説き、国際機関に対し敬意をもって接し、中東和平のために尽力した。バラク・オバマやアル・ゴアと同じように、カーターもノーベル賞を受賞した。そして、外交政策での素晴らしい実績をみてごらんなさい」

 そしてもちろん、保守派がオバマ政権への反発を強めているもうひとつ大きな要因は、高止まりする失業率など、景気がなかなか本格的に上向かない点にある。特に、連邦政府の巨大化を嫌う保守派の基本理念に反し、民間経済への介入を強めるオバマ政権の経済政策には次のように厳しい目を向ける。

 Thanks to Obama’s reckless economic policies, America’s national debt is skyrocketing. According to the Federal Reserve, the share of what we owe nationally now tops $690,000 per family. And yet no matter how loudly we protest the policies fueling the debt, we are still forced to sacrifice our personal prosperity to help shoulder the government’s bills. (p130)

 「オバマの無謀な経済政策のおかげで、アメリカの国の債務は急増している。米連邦準備制度理事会(FRB)によれば、アメリカ国民の世帯当たりの公的債務は69万ドルを突破している。おまけに、我々がいくら声を大にして、債務を膨らませるような政策に反対しても、我々は依然として、政府債務を個人の富で肩代わりすることを強いられている」

 本書は7月下旬に、ニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリストのノンフィクション部門で、第1位で初登場し、その後も売れ続け、直近(ウエブ版9月9日付)でも第12位にランクインしている。


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