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World Energy Watch

2017年10月17日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

温暖化問題と産業振興

 震災後化石燃料の消費量が増大したため電力部門からの二酸化炭素排出量も増加した(図-7)。日本全体のエネルギー起源の二酸化炭素排出量も2010年の11億3900万トンが2013年には12億3500万トンまで増加する(2015年は11億4900万トン)。気候変動に取り組むための合意、パリ協定に基づき、日本は2013比2030年に温室効果ガスを26%削減する目標を国連の気候変動枠組み条約事務局に提出済みだ。

 この目標達成には、低炭素電源と呼ばれる再生可能エネルギーと原子力の活用が必要であり、2030年の電源構成の44%は両電源、原子力20-22%、再エネ24-22%が想定されている。太陽光、風力などの再エネにより低炭素電源の比率を高めることはコスト増につながり難しいため、この比率が設定された。

 1973年のオイルショック直後、多くの国で再エネが注目された。日本でも海洋立国として潮流、海水の温度差を利用した発電などが注目されたが、半世紀近くたつ今も実用化には至っていない。実用化された風力、太陽光の発電コストは下がってきているが、送配電コストは下がらないため、手元に着いた時の電気のコストは高いままだ。何時も発電できない再エネは、例えば送電線の利用率が低いが、送電線の敷設コストは変わらないので、1kWh当たりにするとコストが高くなるのだ。全てを含めた再エネの発電コストが下がるには、長い時間が必要だ。

 一方、原発については最近中国とロシアが欧州諸国で受注している。今も20基の原発を建設中の中国と毎年1,2基の原発を新設するロシアは、原発工事に係るエンジニアを潤沢に保有し、技術も維持していることが受注に繋がっているのだろう(この話は「Wedge」11月号に「原発輸出で躓く日本を尻目に欧州で攻勢をかけるロシア・中国」として掲載します)。

 原発には事故のリスクがある。しかし、原発がなければ、電気料金、安全保障、気候変動問題、技術輸出、全てで問題を抱え、例えば温暖化の目標達成は難しくなる。原発のあるリスクとないリスク、どちらが私たちにとって大きい問題なのかを考え、エネルギー問題を判断することが求められている。

  
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