しかし、プロスポーツは力のある者が大金を手にする世界だ。どんなに傲岸不遜な人間でも、勝ちさえすれば世間の批判もはねのけられる。そんな〝プロフェッショナリズム〟を体現する存在として、ゲレーロのような選手がもっと出てきてもいい。あの落合博満も現役時代に中日からFA宣言したとき、「一番高い金を出してくれるところへ行く」と言い放った。当時は批判も浴びたが、プロの鑑とも言える。
もっとも、そうやって人も羨む大金を稼ぐだけ稼いだ揚げ句、プレーすることへのモチベーションを失ってしまうアスリートも世界にはいる。例えばテニスでは今年7月、バーナード・トミック(オーストラリア)がウィンブルドン選手権1回戦で明らかに無気力な態度を見せて敗退。記者会見で「もうテニスに飽きた。ぼくはまだ24歳だけど、勝ってトロフィーを掲げたり、全力でいいプレーを見せることに満足感を感じられなくなった」と発言し、国際的な批判の的となった。
「飽きた理由」は「お金のためにプレーしているから」
しかも、「飽きた理由」が、「お金のためにプレーしているから」だという。AFP=時事によると、トミックは母国豪州のテレビ番組に出演し、こう真意をぶちまけた。
「言った内容に後悔はない。ぼくの家は裕福じゃなかった。お金がなかった。それがいまではこんな豪邸に住んで、世界中に不動産を持っている。これ(お金を稼ぐこと)がぼくの選択だ。そのために働いてるんだ」
「(トッププレーヤーを目指す若者たちは)テニスなんかやるな。好きなこと、やってて楽しいことをやれ。テニスは大変だ。つらいつらい人生だ。ぼくは抜け出せないから仕方なくやっているだけだ。夢中になったことなんて一度もないよ」
こう言うトミックのATPランキングは過去最高で17位。年収は30億円を下らないともいわれている。ひょっとしたら、同じぐらい稼いでいるメジャーリーガーも、トミックと同じように野球に「飽きる」ことがあるのだろうか。
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