中国の習近平国家主席と韓国の文在寅大統領がベトナムで会談し、関係改善を図っていくことで一致した。両首脳は文大統領の12月訪中で合意し、北朝鮮の核・ミサイル問題について「最終的には対話を通じて解決する」という認識で一致した。
在韓米軍基地への「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」配備を巡って険悪化した中韓関係の改善は、地域情勢の安定化という観点から望ましい。日本が議長国として調整していた東京での日中韓首脳会談も、中韓関係の改善によって実現可能性が高まった。北朝鮮の核問題にしても「最終的な対話解決」という目標は、誰も反対しないだろう。
ただ、一連の流れは中韓関係における中国の優位を固めたという印象を強く与える。10月末に発表された「関係改善に関する両国間協議の結果」は、明らかに中国が韓国から「一筆取った」というものだ。韓国外交にとって将来的な負担になる恐れがあり、日本の安全保障にも影響が出てくるかもしれない。
韓国が表明した「3つのノー」
中韓合意の問題は、韓国の安全保障政策に関する「3つのノー」だ。(1)THAADを追加配備しない(2)米国のミサイル防衛(MD)に参加しない(3)日米韓の安保協力を軍事同盟に発展させることはない——という内容。合意文書には明記されなかったが、韓国の康京和外相が発表前日の国会審議で答弁した。質問したのは親中派で知られる与党議員であり、政府側と打ち合わせた上での質疑であることは自明だろう。
突拍子のない内容とまでは言えない。THAADの追加配備は現時点で論議されていないし、MDへの不参加は韓国の歴代政権が示してきた方針だ。日本に植民地支配された歴史を考えれば、日本を含めた軍事同盟の実現性は極めて低い。
ただし、タイミングが重要だ。答弁した時点では分からなかったけれど、翌日の合意文発表を受けて「そういうことだったのか」となった。合意文には「中国側は、MD構築、THAAD追加配備、韓米日軍事協力などと関連して中国政府の立場と憂慮を表明した。韓国側は、韓国政府が今までに公にしてきた立場を再び説明した」とあったのだ。外相答弁がこれを受けたものであったのは明らかだ。
中国外務省報道官は韓国外相の国会答弁が行われた日の記者会見で「韓国が約束を守るよう望む」と述べた。韓国政府は「約束」という言葉に抗議し、中国側はその後「立場表明を守るよう望む」と言い方を変えた。だが、本質的な意味に違いがあるわけではない。中国は韓国から言質を取ったのである。