だから自然言語処理に投資する
人と人が会話するように「機器が音声やテキストで人と会話する」というユーザーインタフェースには大きな可能性があると思います。ユーザーの指示や質問にスマートに応答するには、音声アシスタントという仲介のボトルネックを解消しなければなりません。
会話という新しいユーザーインターフェースで、ユーザーが機器の独自の機能やサービスを利用できるようにするには、機器と連携するサービスクラウドが直接ユーザーと会話する必要があります。そして、サービスクラウド上で自然言語処理を行うことによって、ユーザーの「指示」に従って自然言語処理が選択すべき「行動」を、機器のメーカーが自由に設定することができます。
音声アシスタントはユーザーの様々な指示や質問に応答しなければなりませんが、例えばテレビ専用の自然言語処理なら、「テレビ操作と番組に関する会話」という前提をつけること(絞り込み)が可能です。気が利いたジョークで応えることはできないかもしれませんが、「わからない」「できない」ことを大きく減らすことができるはずです。
サービスクラウドで電子番組表(EPG)の情報を解読してデータベース化しておけば、「ニュース番組に変えて」とか「今夜のおすすめのドラマは?」といった指示や質問にも応えられます。
ユーザとの会話や、視聴や予約の履歴などのデータを蓄積して分析することによって、ユーザーの嗜好や行動の傾向を理解することができます。それによって「おすすめ」の精度を向上させたり、ユーザーが忘れていたり気がつかなかったりした番組を、気を利かせて自動的に録画しておくことも可能になるかもしれません。
自然言語処理は、LINEなどのチャットアプリでのテキストによる会話にも対応できます。友達とチャット(会話)するように、テレビのチャットボット(会話ロボット)とチャットします。外出先でチャットボットに「いまやってるテニス中継を録っておいて」、そして帰宅してからテレビに「さっきのテニスを再生して」という具合です。
スマートホームでは「家電」を一括りにして、音声アシスタントというプラットホーム上で、それらに共通する基本的な操作の技術的な実現方法を検討するようです。しかし、それでは日本の家電メーカーの行き詰まり状況を打開することはできないでしょう。
国内外の家電メーカーだけでなく、ハードウェアに進出を始めたアマゾンやグーグルなどとの競争を勝ち抜いて行くためには、独自の「機器とサービスクラウドとの連携」によって新しい提供価値を創出しなければならないと思います。
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