2024年12月10日(火)

イノベーションの風を読む

2017年12月27日

 経済産業省が推進するスマートホームでは、「ユーザーはスマートスピーカーなどを使って、音声でクラウド上の音声アシスタントに家電の操作を指示し」「音声アシスタントは、それを家電メーカーのサービスクラウドに伝え」「サービスクラウドが家庭内の機器を操作する」という流れになっています。それを図にすると、家電メーカーにとって残念な3つのことが見えてきます。

(nadia_bormotova/iStock)

残念ながら他社との差別化はできない

 スマートホームの狙いは、高機能化による差別化が困難になってしまった日本の家電メーカーの行き詰まり状況を、家電と連動する革新的なサービスを創出して打開することのようですが、図に示したように、機器を操作するサービスクラウドは、音声アシスタントから、アマゾンやグーグルが提供するAPIによってユーザーの指示を受け取るだけです。

 音声アシスタントはユーザーと会話し、音声認識と自然言語処理によってユーザーの指示を理解してAPIに変換します。APIはいろいろなサービスクラウドから利用されるので、個別の機器に特徴的な機能の操作やサービスに対応するのは困難です。家電メーカーは、APIが対応していない独自の機能やサービスによって、他社の機器と差別化することはできないのです。

残念ながら重要なデータは蓄積できない

 経済産業省は、「IoT・ビッグデータ・AI等のITの技術革新により、実世界から得られたデータを分析・解析し、その結果を再び実世界にフィードバックする社会が現実になりつつある」とし、スマートホームでは「IoTによってデータを収集して解析する」ことが重要だと説明しています。

 確かに、家電がインターネットに繋がること(IoT)によって、家電から何らかのデータをサービスクラウドに送ることができるようになります。しかし、どのようなデータを収集して何を解析するのか、それによって、どのような価値をユーザーにフィードバックするのかは明確になっていません。IoTが語られるときにありがちな、「データがあれば何かできそうだ」というレベルの話です。

 一方で、ユーザーとの会話は音声アシスタントに蓄積されます。アマゾンやグーグルは、自然言語処理の結果をさらに分析することによって、ユーザーの嗜好や行動の傾向を把握することが可能になります。

残念ながらプラットフォームは押さえられない

 IoTによって「プラットフォームへの情報集約とデータのマルチユース」を可能にすることもスマートホームの狙いのようです。しかし、その構図でのプラットホームは音声アシスタントです。

 多くの日本の家電メーカーが、アマゾンやグーグルの音声アシスタントと会話するためのスマートスピーカーを発売しています。そして、APIに対応した家電(機器とサービスクラウド)を供給して、それらのプラットフォームの価値を高めて行くのでしょうか。多くの家電メーカーがプラットフォームビジネスを標榜していますが、スマートホームではそれを実現することはできません。

 しかし、クラウドのサービスとの連携は、家電をスマートにするための有望な手段でしょう。家電メーカーは独自の「機器とサービスクラウドとの連携」を開発し、競合との差別化を目指すべきだと思います。


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