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2010年12月22日

セオドア・ロビンソン 《婚礼の行列》
1892年油彩・キャンヴァス  テラ・アメリカ美術基金蔵
Photography © Terra Foundation for American Art, Chicago

  「第三章 家族と友人」は、初期滞在メンバーの後に移住してきた画家たちの作品が展示される。カタログの「印象主義の村ジヴェルニー、芸術家のコロニー」で本展監修者のK.ブルギニオン氏は「ジヴェルニーは人気を博し、会話は英語でなされ、パリの雑踏から抜け出そうという比較的裕福な人向きの場所となった」ことを指摘している。そのような雰囲気を描く作品が並ぶが、ここでちょっと戻ってみよう。第二章に展示されているロビンソンによる《婚礼の行列》はその先鞭であると、ピンとくるはずだ。K.ブルギニオン氏の解説によると、ロビンソンは「感銘を伝えようとしたのである」。ジヴェルニーは「憧憬の地」として描かれるということに加えて、この地に根を下した画家たちの生活の舞台ともなっていたのだ。

 「第四章 ジヴェルニー・グループ」の部屋を抜けると、「睡蓮の連作」が悠然と現れる。モネが1897年から1919年にかけて制作した《睡蓮》の作品群だ。モネの絵画を見る時は作品から少し距離を保ち、目を細めるといい。すると絵画が立体的に見えてくる。晩年のモネ、実は白内障だったのだ。ここにこそ「光の画家」と言われる秘密が隠されている。

学芸員のおすすめポイント

 宮澤さんが展覧会の見どころを教えてくれた。「第一章の部屋の作品群は、モネがジヴェルニーに感動した想いが込められています。第四章の部屋は、モネが自分の世界にこもって描いた作品群です。この二つの対比、そしてアメリカ人が描く作品の違いを楽しんでください」。

 猛暑から転じてこの冬は寒くなりそうだ。渋谷の街には雪が舞い降りるだろうか。《ジヴェルニーの冬》のように。そしてジヴェルニーの冬はどんな寒さなのだろう。そんな風に想いを馳せながら展覧会場を後にするのも、悪くないだろう。

クロード・モネ 《ジヴェルニーの冬》
1885年 油彩・キャンヴァス  ポーラ美術館蔵



「モネとジヴェルニーの画家たち」
会期:2010年12月7日(火)― 2011年2月17日(木)
開館時間:10時―19時 毎週金・土曜日は21時まで(12月31日を除く)
※入館は各閉館の30分前まで
※1月1日のみ休館
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
東京都渋谷区(山手線他渋谷駅下車)
http://www.bunkamura.co.jp/museum/index.html
お問合せ:03-3477-9413
入館料: 一般1,400円 大学・高校生1,000円 中学・小学生700円

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