■今回の一冊■
DECISION POINTS 筆者George W. Bush, 出版社Crown, $35
アメリカのブッシュ前大統領の回顧録だ。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストの単行本ノンフィクション部門で、7週連続でトップを独走。最新の1月16日付のランキングでも3位につけている。政権末期には人気が低迷したブッシュ前大統領だが、政治好きのアメリカ国民は、こぞって本書を手にとっている。
タイトルは直訳すると「決断の瞬間」といった感じだ。イラク開戦など14の重要な決断を巡る回想となっている。まず、日本に関係がある部分をみてみよう。
2001年9月11日の同時多発テロの直後、各国元首から電話をもらったことを回想する部分で、日本の小泉純一郎元首相からの励ましの言葉を次のように書いている。
Junichiro Koizumi, prime minister of the nation that struck America at Pearl Harbor, called the events of September 11 “not an attack against just the United States but an attack against freedom and democracy.” (p141)
「真珠湾を攻撃したことがある国の首相である小泉純一郎は9・11について、『アメリカだけでなく、自由と民主主義に対する攻撃だ』と言ってくれた」
日本について、安保条約で結ばれた同盟国とは表現せず、真珠湾を持ち出すあたりに、アメリカ人の本音があるのだろうか。次の一節でも、第2次世界大戦の影が色濃い。
私の父は日本と戦った
The transformative power of freedom had been proven in places like South Korea, Germany, and Eastern Europe. For me, the most vivid example of freedom’s power was my relationship with Prime Minister Junichiro Koizumi of Japan. Koizumi was one of the first world leaders to offer his support after 9/11. How ironic. Sixty years earlier, my father had fought the Japanese as a Navy pilot. Koizumi’s father had served in the government of Imperial Japan. Now their sons were working together to keep the peace. (p397)
「自由が引き起こす変革の力は、韓国やドイツ、東欧で証明されてきた。私にとっては、日本の小泉純一郎首相とわたしの親交こそが、自由が持つ力を最も鮮明に示す好例だ。小泉は9・11の後に最初に支援を申し出てくれた世界の元首たちの1人だった。皮肉なものだ。60年前に、私の父は海軍のパイロットとして日本人と戦った。小泉の父も大日本帝国の政府に仕えていた。その息子たちが平和維持のため協力したのだ」
第2次世界大戦での日本とアメリカの不幸な関係は、9・11の同時テロから間もない時期を回想する次の一節でもブッシュ前大統領の頭に浮かぶ。