2024年11月21日(木)

From LA

2018年2月23日

 テスラ社CEOでありスペースX、トンネル会社のボーリング社など様々な話題を振りまくイーロン・マスク氏。その弟であるキンボール氏への注目度が今急上昇している。

 キンボール氏は1972年生まれ。高校卒業後、当時カナダにいた兄、イーロン氏に合流、クイーンズカレッジに進学した。95年に卒業後、イーロン氏と共にZIP2という会社を立ち上げた。ZIP2はオンラインのシティガイドで、ニューヨークタイムズやシカゴトリビューンといった米大手新聞の記事を掲載することで大きくなり、1999年にコンパック社に3億ドル余りで買収された。

キンボール・マスク 氏(Neilson Barnard/Getty Images for New York Times)

 兄弟はこの資金を元手にのちにPaypalとなった企業を立ち上げたが、その後の人生は大きく異なる。兄イーロン氏はカリフォルニアにとどまりテスラを立ち上げたが、弟は食への興味が捨てきれずニューヨークのフランス料理の学校に入学、その後コロラド州ボールダーで「キッチン・ボールダー」というビストロを立ち上げたが、このレストランはザガットなどから「米国で最高のレストラン」という評価を受けた。

 キンボール氏のレストランビジネスはその後も成長を続けるが、同時にグローウィ基金に賛同、コロラドを中心に「学校の庭での菜園作り」を推進。全米の小学校をまわり子どもたちに正しい食育、そこから環境問題などへの啓蒙運動を行うようになった。

 キンボール氏の理想は「世界に正しい栄養を届けること」だという。もちろん今も飢餓に苦しむ国はある。しかし基本的に人々を飢えさせないための食産業の時代は終わった。同氏は「自分が子どもの頃には二型糖尿病というのは滅多に聞かなかった。しかし今は多くの子供がこの病を持っている。このような食文化は根本的に覆す必要がある」と語る。

 人々に本物の食べ物を提供するためには、まず農業の構造を変える必要がある。そのために子どもたちに学校で実際の菜園作りを学ばせ、本当の食べ物とは何かを教える。この運動は広がり、現在では例えばニューヨーク、ブルックリンの駐車場をインドア菜園に変えて「都会で農業を」といった運動にもつながっている。

 しかし無農薬のヘルシーフード、というと非常に高価なイメージがある。キンボール氏はこれに対し「一家4人でマクドナルドで食事をしよう、と考えると25ドルはかかるだろう。しかし自宅でチキンと野菜を調理すれば材料費は15ドル程度で済む。そういう経済的な側面も教育する必要がある」という。

 そして米国の農業のあり方も根本的に変えたい、とキンボール氏は語る。大規模化、高齢化というのはどの国の農業も抱える問題だが、「より地域に即し、需要のある作物を栽培することで農業はしっかりと儲かる仕事になる」という。例えば伝統的に綿花を作っていた農家はそれに固執しがちだが、現在の米国で綿花は金にはならない。そこで地域に需要のある野菜などに作替えすることで農家の生き残りを図りたい、という。


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