全世界で高速移動手段であるハイパーループ敷設を推進する米ヴァージン・ハイパーループ・ワン社が、ハイパーループを用いた移動手段を顧客に示すアプリ開発を早くも行い、その概要が発表された。
アプリはHEREテクノロジーズ社との提携で開発されたもので、ヴァージン・ハイパーループ・ワン社によると「完璧なA地点からB地点への移動をサポートする」ものだという。どういう意味かというと単純にハイパーループ路線の案内、時刻表、予約などを行うだけではなく、顧客が今いる地点から目的地まで、ハイパーループを利用した最速の移動方法を具体的に案内する、というものだ。例えば自宅からハイパーループ駅までの道順を徒歩部分まで含めて具体的に知らせ、同様にハイパーループ駅から目的地までの最終的な道のりまでもカバーする。
しかもこのアプリは公共交通からウーバーなどのライドシェアサービスに至るまでをワンストップで予約することも可能だという。つまり自宅からウーバーを呼び駅へ、そこからハイパーループ、到着地から再び公共交通もしくはライドシェアなど、すべての予約を1つのアプリで行うことができるため、スムーズな移動が可能となる。
HEREテクノロジーズのマッピングシステムは現在136カ国、1300都市をカバーしている。さらに連絡通路などの3Dマッピングも用意されており、ハイパーループ開設の折には便利な移動アプリとして全世界で利用される可能性がある。
しかし、なぜ今こうしたアプリが発表されるのだろうか。ハイパーループ計画は昨年「グローバル・チャレンジ」と名付けられた、世界中のハイパーループに興味を持つ自治体を含んだグループによる事業計画を精査し、10カ所が選ばれたばかり。このほかに以前から計画が進められていたドバイや米国内の一部地域はあるものの、実現にはまだまだ時間がかかる。
ちなみにグローバル・チャレンジで選ばれたのは英国が2路線、インド2路線、カナダ1路線、メキシコ1路線で残りが米国内となる。米国ではシカゴからピッツバーグといういわゆるラストベルトをつなぐもの、コロラド州デンバーを中心にしたもの、フロリダ州マイアミを中心にしたもの、そしてテキサス州のダラス―ヒューストン間のものだ。この中には以前に高速鉄道計画に興味を示していた地域も含まれるが、従来の高速鉄道計画よりも「費用が安い」というハイパーループが選ばれたところもある。
しかもヴァージン・ハイパーループ・ワン社では1月30日になり、上記に含まれないミズーリ州での計画を突然発表。これはカンザスシティからセントルイスまでを結ぶ路線で、ミズーリ大学を含む「ミズーリ・ハイパーループ合同計画」とヴァージン・ハイパーループ・ワンが提携し、実現に向けての調査を開始した、というものだ。
ハイパーループそのものはまだテスト路線が完成し短距離のテスト運用が始まったばかり。これからより長いテストチューブを建設して有人の走行テストなど、実現までに超えるべきハードルは高い。それなのにヴァージン・ハイパーループ・ワン社は次々に計画を発表し、アプリまで開発して近い将来の実現を確信しているように思える。