日本の総選挙はまさに混乱のうちに終了した。野党の分裂、結合によるゴタゴタの末、自民が圧勝したがこれが国民の民意の反映かというと疑問が残る。そもそも民主主義において、代議員とは民意を政治に伝えるべき存在のはずだが、現代政治ではそれが実現されているとは言い難い。
そんな中、「100%民意を反映した政治を行う」ことを公約として立候補した1人の議員が米国で注目を集めている。コロラド州ボルダーの市会議員に立候補しているカミロ・カサス氏だ。自らが属する党の決定がどうであろうとも、支持してくれる人々が選んだ政策に従って投票を行う、という。
カサス氏が利用するのはParti.Voteというスマホアプリだ。Parti.Voteは民主主義プラットホームを標榜し、利用者が住む地域の議会政治での議題について「賛成」「反対」をアプリを通して投票するシステムだ。もちろんそれが政治にそのまま反映されることは今の所ないが、少なくとも市民が何を望み、それに対し自治体政府の決定とは隔離しているのかどうかをチェックすることができる。
カサス氏はboulder.parti.voteという、Parti.voteの地域版を自ら立ち上げ、市民に対し利用を呼びかける。そして「当選した暁には、全ての意思決定をboulder.parti.voteの多数意見に従って行う」という。つまり、本当の意味での民意を政治に反映させる立場の人間として市会議員を目指す、というのだ。
これは非常に徹底しており、カサス氏自らの意見、スタンスは一切反映せず、単純にアプリが示す民意のみがカサス氏を動かす。もし賛成反対が全く同数だった場合のみ、カサス氏の個人的な意見が加味される。「市民は意見を議会に通すためにロビー活動を行ったりデモを行ったり、様々な活動をするが、もし議員が彼らの意思を確実に反映する存在であれば、そうした努力よりも確実な民主主義が実現する」とカサス氏は語っている。
実はこのようなインターネットを通して民意を直接政治に反映させよう、という動きは各地で見られている。例えばニューヨーク市の市政監察官の候補者の1人はNYSpeaksというアプリを使い、市民による直接のフィードバックを業務の中に生かす、と主張している。オーストラリアでは昨年の国政選挙でブロックチェーンをベースとしたFluxというアプリが13人の候補者を支援した。やはりブロックチェーンを使うSovereignというアプリも、目的は重要な政治決定について市民の意見を直接伝えることにある。
ブロックチェーンとこうしたスマホアプリにより、未来の政治のあり方も変わる可能性がある。人々は投票所に行かずとも自宅でセキュリティの確保されたブロックチェーンによって投票を行うことが出来るようになるかもしれないし、こうした動きが進めばそもそも「政治家は不要、全てはアプリによる投票で決定する」世の中がいつかは登場する可能性もある。
ただし現時点ではまだアプリでの民意反映には問題点も指摘されている。まず、すべての人がスマホを持っているとは限らない、という点だ。アプリによる投票となると、市民の年代層に偏りが出る可能性がある。つまり35歳以下のいわゆるミレニアル層の投票が中心となり、年配者の意見が反映されにくくなるかもしれない、という懸念だ。また都市部と郊外の差異も増大する危険性がある。