昨年末に「今度発売するモデル3にはオプションとしてソーラールーフの設置も考えている」と発言したテスラCEO、イーロン・マスク氏。EV普及にとって欠かせないのがバッテリーチャージステーションの充実及び急速チャージ可能なバッテリーの開発だ。ソーラー・シティを傘下に持ち、家庭用のソーラールーフを販売するテスラにとってはごく自然な発想である。
ところがマスク氏は7月15日に行われた全国知事連合のミーティングにおいて「この考えを放棄する」と発表した。その理由について「(ソーラールーフ設置について)真剣に考えた。自分のチームに導入を実現するようプッシュした。車にソーラールーフを設置できる可能性はあるか? 技術的にはトランクから取り出せるオープンカー用のハードトップのようなトランスフォーマーによって車をソーラーパネルで覆うことは可能だ。晴れた日にこのパネルを取り出して1日あたり20から30マイル走行可能な電力を作り出す……でもそれは非常に実現が困難だ」。
車へのソーラールーフ設置と言えばトヨタがすでにプリウスの一部モデル(プリウス・プライム)で実現しているが、実際にはそこから作り出される電力は車を「せいぜい2、3マイル走らせる」程度だという。車のルーフ部分の面積が十分に広くない、というのが最大の問題点で、ソーラールーフのコストがパフォーマンスに見合わないのだ。
マスク氏が考えていたのは、プリウスのように屋根にソーラーパネルがあらかじめ設置されている、というものではなく、本人の言葉にあるように「トランクから取り出し、駐車スペースなどで広げられるもの」だった。というのもプリウスの例からわかるように、車の屋根の面積は電力を得るには十分ではない。何枚ものパネルを傘のように円形に広げ、車全体を覆う、というような大掛かりなものとなる。
過去には実際に旧型のロータスエリーゼを使ったテスラロードスターにこのような装置を設置する「ソーラーマン」というアイデアを発表し、マイクロファンディングで投資を募った例もあった。しかしこのような装置をコンパクトに、簡単に出し入れできるオプションを作るのは難しい、というのがマスク氏の結論だ。