2025年3月15日(土)

BBC News

2025年3月14日

記者会見に臨んだロシアのプーチン大統領

ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員、ガブリエラ・ポメロイ記者(キーウ)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は13日、アメリカが出しているウクライナでの停戦案について、停戦のアイデアは支持すると述べた。だが、停戦の性質について「疑問」が残るとし、いくつかの厳しい条件を提示した。

プーチン氏はモスクワでの記者会見で、ウクライナが11日にアメリカとの協議で合意した30日間の停戦案について、「アイデアは正しい。私たちはそれを支持する。だが、議論が必要な疑問がある」と述べた。

プーチン氏はまた、停戦は「持続的な平和をもたらし、この危機の根本原因を取り除く」ものであるべきだと主張。「私たちはアメリカの同僚やパートナーらと交渉する必要がある」、「私がドナルド・トランプ(米大統領)と電話で話すかもしれない」とした。

さらに、「ウクライナ側が30日間の停戦を実施するのはいいことだ」、「私たちはそれを支持するが、微妙な部分がある」と述べた。

このプーチン氏の発言に対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はプーチン氏が事態を「操ろうと」していると批判。ロシアへの追加制裁を呼びかけた。

こうしたなか、アメリカはロシアの石油、ガス、銀行部門に対し追加制裁を科した。

プーチン氏、疑問点を列挙

プーチン氏は記者会見で、ウクライナが昨年8月に奇襲してその一部を占領したロシア・クルスク州が、論点の一つになると述べた。

クルスク州についてプーチン氏は、ロシアが完全に奪還したと主張。同州にいるウクライナ軍は「孤立している」とし、こう続けた。

「相手は撤退しようとしており、私たちが支配している。相手は装備を放棄している」、「クルスクにいるウクライナ人には二つの選択肢がある。降伏か死だ」

プーチン氏はまた、停戦がどう機能するかについて、「その30日間はどう使われるのか? ウクライナによる動員のためか? 再武装のためか? 人の訓練のためか? そうしたことは一切ないのか? そして疑問なのは、それがどうコントロールされるのかだ」と疑問点を挙げた。

さらに、「誰が戦闘を終わらせる命令を出すのか? どれだけの代償で出すのか? 停戦になったとして、2000キロメートル以上に渡る地帯で停戦が破られたかどうかを誰が判断するのか? こうした疑問はすべて、双方による綿密な作業が必要だ。誰がそれを取り仕切るのか?」と述べた。

ゼレンスキー氏、プーチン氏を批判

一方、ゼレンスキー氏は、恒例の夜のビデオ演説で、「(プーチン氏は)直接的にノーとは言わない」が、「実際には拒否の準備をしている」と主張。「プーチンは、自分がこの戦争を続けたい、ウクライナ人を殺したいのだと、トランプ大統領に直接伝えたくないのだ」と述べた。

そして、プーチン氏があまりに多くの条件を設定したため、「何もまったくうまくいかない」とした。

この日のプーチン氏の発言とゼレンスキー氏の反応によって、両氏の立場の隔たりが明確になった。

ウクライナは、2段階のプロセスを望んでいる。迅速な停戦と、その後の長期的な解決に向けた協議だ。

一方、ロシアは、それら二つのプロセスは不可分で、一つの合意ですべての問題を判断すべきだと考えている。

双方とも、そうした違いについて議論することに満足していると思われる。

ウクライナは、ロシアが和平に後ろ向きで、時間稼ぎをしているとの印象を広めることで、ロシアに圧力をかけられると考えている。ロシアは、北大西洋条約機構(NATO)の拡大やウクライナの主権という、根本的な懸念を提起する機会を手にしていると考えている。

こうした状況は、トランプ氏にとって問題となる。彼は迅速な結果を望んでおり、数日内に戦闘を終わらせたいと明言している。

だがプーチン氏は今、協力するつもりはない様子だ。

トランプ氏、最終合意の詳細を議論と

トランプ氏は、プーチン氏の発言を受け、同氏と「喜んで」会うと、ホワイトハウスで述べた。

また、ロシアが「正しいことをして」、30日間の停戦案に合意することを期待していると発言。「ロシアからの停戦を望んでいる」とした。

これに先立ちトランプ氏は、NATOのマルク・ルッテ事務総長と大統領執務室で会談した際、ウクライナとはすでに具体的な協議をしたと記者団に説明した。

「私たちはウクライナと、保持される土地や失われる土地、その他すべての、最終合意の要素について話し合ってきた」、「最終合意の多くの詳細について、実際にすでに議論された」とトランプ氏は述べた。

ウクライナのNATO加盟については、「誰もがその答えを知っている」とトランプ氏は話した。

ロシアに新たな制裁

ロシアに対してはこの日、石油とガスに関する新たな制裁が発動された。トランプ政権は、ロシアによる米決済システムの利用をさらに制限。ロシアの石油を他国が購入するのを難しくした。

そうしたなか、プーチン氏は、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ中東担当特使とモスクワで非公開で会談した。

これに先立ち、クレムリン(ロシア大統領府)のユーリ・ウシャコフ外交政策顧問は、アメリカが提案した停戦案を拒む考えを示した。

クレムリンは12日、プーチン氏がロシア・クルスク州を訪問した際のビデオ映像を公開した。プーチン氏は象徴的に軍服姿だった。ロシアはその後、同州の要衝の町スジャを奪還したと発表した。

ロシアは2022年2月にウクライナに対する全面侵攻を開始。現在、ウクライナ領土の約2割を掌握している。

ロシア軍の戦死者は9万5000人以上に上っている。

ウクライナは戦争の犠牲者について、昨年12月に最後の情報更新をした。ゼレンスキー氏はその際、兵士と将校の戦死者が計4万3000人だと認めた。西側の専門家らは、この人数は少な過ぎるとみている。

(英語記事 Putin sets out conditions for Ukraine ceasefire

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c70w1lp1rdqo


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