2025年3月15日(土)

BBC News

2025年3月14日

ロシアのプーチン大統領

ラウラ・ゴッツィ、ポール・カービー(BBCニュース)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、戦闘を停止させる用意はあるが、「微妙な点がある」としている。アメリカの特使とクレムリン(ロシア大統領府)で会談するのを前に言及したその微妙な点は、プーチン氏の考え方の重要な鍵でもあるため、30日間の停戦の望みを打ち砕く可能性がある。

プーチン氏が問題視しているのはいずれも、ウクライナに対する全面侵攻の間ずっと、そしてそれ以前から、要求し続けているのと同じ内容だ。一方、ウクライナと西側の協力諸国にとって、その多くは受け入れられないか、実現不可能なものだ。

プーチン氏は13日の記者会見を、「私たちは敵対行為を停止する案に同意する」という前向きな発言で始めた。ただ、「この停止は、長期的な平和をもたらし、現在の危機の根本原因を取り除くものでなくてはならない」と付け加えた。

長期的な平和の必要性には、誰も異議を唱えないはずだ。一方で、プーチン氏の言う戦争の根本原因は、ロシアの影響が及ばない主権国家でありたいというウクライナの願望にまつわる。

ウクライナは、北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)の一員になることを望んでいる。その思いは強く、憲法に明記しているほどだ。

アメリカのドナルド・トランプ大統領はすでに、ウクライナのNATO加盟に疑問を投げかけている。一方、プーチン氏はそもそも、ウクライナが国家だという考えそのものを何度も否定している。

そして、このことこそ、プーチン氏の言う微妙な点の多くの根底にあるのだ。

プーチン氏は、ウクライナによる軍の強化と、武器の補充を止めたいと考えている。西側からこれ以上、武器が運び込まれないことを望んでいる。そして、それを誰が検証するのか、はっきりさせたいという考えだ。

この戦争の当初から、プーチン氏はウクライナの「非武装化」を要求してきた。だがそれは、ウクライナと、その同盟関係にある国々にとって、受け入れがたいものだ。

本質的にプーチン氏は、ウクライナや西側とは逆の方向で、安全の保証を求めているのだ。

停戦のメリット認めない考え

ロシアが自軍の再強化や兵士動員の停止に同意することはあるのだろうか。あり得そうにないことで、プーチン氏がクレムリンで記者団に語った言葉にも、譲歩の兆しは一切なかった。

プーチン氏は、西部クルスク州の前線付近とみられる場所から戻ったばかりで、強気の態度を見せている。同州は昨年8月以来、ウクライナに部分的に占拠されている。

クルスク州ではロシアが優勢だ。プーチン氏は明らかに、自分が強い立場で交渉していると自覚しており、その優位を失いたくないと思っている。

「私たちが30日間軍事行動を停止するとして、それが何を意味するのか? 現地の全員が戦闘を離れるのか?」とプーチン氏は述べた。

ロシア国防省は13日、ウクライナが掌握していた最大都市スジャを、ロシア軍が完全に統制下に置いたと発表した。ウクライナ軍が残したのは、くさびだけだとプーチン氏は批判し、なぜ今ロシアが停戦するのかと疑問を口にした。

そして、「数日以内に物理的に封鎖されれば、誰もそこから出られなくなる。二つの選択肢しかなくなる。降伏か死だ」と述べた。

同じことは、長さ1000キロメートルにわたる前線全体に言えると、プーチン氏は主張している。戦地の状況は急速に変化しており、ロシア軍が「ほぼすべての地域で前進している」と述べている。

だが現実は違う。ロシアは最近、東部でいくつかの成功を収めているものの、前線のほとんどは膠着(こうちゃく)状態にある。

プーチン氏は、30日間の停戦はロシアの優位性を奪い、ウクライナの再編成、再武装を可能にすると考えている。

「そうしたことが起こり得ない保証はあるのか」と、プーチン氏は反語的に尋ねた。

今のところ、停戦の条件の維持を保証する仕組みは提案されていない。

西側の15カ国が暫定的に、平和維持軍への参加を申し出ているが、これは最終的な和平が合意された場合に限ったもので、停戦のために兵士を派遣するものではない。

いずれにしろ、ロシアがそうした取り決めを認めることはないだろう。

プーチン氏は、これらの「微妙な点」から、停戦がロシアの利益になるとは考えていないようだ。自軍が前進しているときには、なおさらそうだ。彼の全体に対する見通しは、「現地の状況がどう進展するかに基づいている」のだ。

プーチン氏は13日遅く、トランプ氏の特使のスティーヴ・ウィトコフ氏とモスクワで会談する。

この会談で何が起こるにしろ、究極的に最も重要な対話はトランプ氏とのものだと、プーチン氏は分かっている。

「私たちはアメリカの同僚と話す必要があると思う。(中略)おそらくトランプ大統領と電話し、これについて議論する」と、プーチン氏は述べた。

しかし、プーチン氏はこうした発言に先立ち、自らの考えを述べていた。つまり、停戦への道にはほぼ実現不可能な条件が散りばめられているという内容のメッセージだった。

(英語記事 Is Putin ready for a ceasefire or playing for time?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c04z1wvz7weo


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