業界玉突き人事、ではあるまいが、意外なところで意外な人の名前が取りざたされている。フォード・モーターズCEOを事実上クビとなったマーク・フィールズ氏である。なんと現在ウーバーの新CEO候補として名前が挙がっている、というのだ。
フィールズ氏は2014年にフォードCEOに就任したが、前任者であるアラン・ムラーリー氏と比べて評価は低かった。1989年にフォードに入社、若くしてアルゼンチン、日本などのオペレーションを担当したエリートではあるが、CEO就任以来フォード株価は下がる一方で、今年ついに企業としての総資産評価がテスラに抜かれた、と話題になった。
フォードの新CEOに就任したのは、フォードの子会社で自動運転部門であるフォード・スマート・モビリティCEOだったジム・ハケット氏。この交代を強く望んだのはフォード創業者一族で会長でもあるビル・フォード氏、と言われる。世の自動車業界がこぞって自動運転、ライドシェア、EVに流れる中で「より迅速な企業文化の変化、再活力化を行える人物」としてハケット氏が浮上した。
実際ハケット氏は「これからの自動車産業はシリコンバレーのIT企業をお手本とした新しい発想、ユーザーへの新しい『経験』の提供が必要」と語るなど、未来を見据えた改革発言を行なっている。
しかし、ライドシェアサービス大手ウーバーでCEO、トラビス・カラニック氏の解任、というビッグニュースが発生し、フォードを去ったフィールズ氏に大きなチャンスが巡ってきた。
今年に入り数々のスキャンダル、そして現在もグーグルの自動運転部門であるウェイモとの裁判が継続中、とまさに会社がガタガタ状態のウーバーにとって、精力的に発展してきた過去と決別し、安定企業としての存続が何よりも優先事項になっている。そのためにもビッグネームCEOを据えて会社の規律を強めることが先決だ。
ウーバーは今年8月中旬ごろをめどに新CEOを立てる予定だが、フィールズ氏がフォードを去ったのは絶妙のタイミングとも言える。まだ上場していないウーバーではあるが会社資産総額は500億ドルとも言われ、フィールズ氏にとっても手腕を発揮するのに十分な場所でもある。