2024年12月22日(日)

From LA

2017年4月14日

 「航空産業のテスラ」と呼ばれ、注目を集める企業がある。米ワシントン州に本拠地を置くズナム(Zunum)アエロ社だ。CEOのアシシュ・クマール氏はマイクロソフト、グーグル、デル、マッキンゼーなどで経験を重ね、2013年ズナムを設立した。目的は「商業用のHEA(ハイブリッド電気航空機)の製造」だ。ハイブリッドとは電池と化石燃料を合わせたエンジンだが、ズナムが目指しているのは全体のエネルギーの20%をバッテリーからのものにする、というシステム。これにより航空機の騒音は75%、排気ガスは80%カットできる、という。

ズナムアエロ社のHEA

 クマール氏は予てからHEAは経済全体に大きな衝撃を与えるものになる、と主張して来た。なぜならEVの開発が進み、バッテリー価格は下落する。しかし通常の航空機はジェット燃料に多大な費用をかけ続ける。特に短距離のフライト、例えばサンフランシスコーロサンゼルス間を考えた時、クマール氏は「HEAによるオペレーティングコストは40-80%下落、またエンジン稼働などの時間がかからないため所要時間も約半分になる」という。

 クマール氏にとって、HEAで最も大切な部分はバッテリーだ。現在ズナム社は30を超えるバッテリーメーカーに打診、最適なバッテリーを選定中だが、最終的にはリチウムイオンもしくはソリッドステートが採用されることになるだろう、という。しかし、10−50人乗りの航空機を飛ばすためのバッテリー密度は1キログラム当たり300ワット時だ。現在利用されているバッテリーで最もこれに近いのがテスラモデルSに採用されているものでおよそ250ワット時/キロである。また、テスラ社CEOイーロン・マスク氏も垂直離陸着陸可能(VTOL)なEAの可能性を述べているが、同氏によると大陸横断に必要なバッテリーは400ワット時/キロというハイスペックなものになる、という。

 同様にEAを開発、テスト飛行あるいは商業飛行させている企業は世界中にいくつかあるが、ズナムへの注目がにわかに高まっているのはボーイングとジェットブルー(米のLLC航空会社)が同社に投資した、というニュースが流れたためだ。投資額は明らかにされていないが、数千万ドル単位と予測される。

 ズナムは最終的に50人乗りのHEA航空機を目指すが、実現するのは10年後が目処、という。しかし今後2年以内に10人乗り程度のプロトタイプを製造、飛行テストを行う予定だ。


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