航空産業は現在急速に新技術への関心を高めつつある。エアバス社が「空飛ぶ車」の開発のためシリコンバレーに研究開発会社を設立、今年終わりにはテスト飛行を計画している。VTOL型の電池駆動の空飛ぶ車により「都市の交通渋滞を解消、環境にも優しい代替交通機関」を作り上げるのが目的だ。エアバスは他にも超高度ドローンを衛星の代わりに使用する、というゼフィール計画も進行させている。
この動き、自動車業界が自動運転やEV開発に次々に乗り出しているのとどこか似ている。化石燃料はいつか底をつく。そのため代替エネルギーの利用について今から研究開発を進める必要がある。またドローンなど、空の自動運転は陸上の自動運転よりも進んでおり、この分野でも主導権を他の業界に渡さないため自社の技術が必要だ。航空産業でも自動車産業と同様、例えばバイオ燃料の使用など、様々な試みが行われている。
航空業界のテスラになる可能性のある企業
自動車業界ではテスラがEVの可能性を広げ、大手メーカーも追随せざるを得ない状況だが、航空産業ではまだテスラのような企業は生まれていない。しかし米フォーブス誌などがズナムを冒頭のように「航空業界のテスラになる可能性のある企業」として取り上げており、今回の大手による投資でその可能性は非常に色濃くなっている。
現在1人あるいは2人乗りのEAは存在するが、商業レベルで50人乗り、というのは実現すれば世界初となる。実現への壁はまだまだ高いが、EAの大きな問題とされるのが速度の遅さだ。エアバスが開発した2人乗りEAでも最高速度は130マイル時程度。この速度は車でも達成できる。これを克服するためにズナムではハイブリッドシステムを採用し、ジェットエンジン飛行機と変わりない速度の実現を目指している。
2年後にズナムがどのようなプロトタイプを製造するのか。他の航空機製造業社も同様にEAの商業用航空機の可能性を今後追求し始めるのか。今回の投資話で注目すべきはLCCのジェットブルーの参入だ。比較的短距離を結び、大手航空会社によるサービスのニッチ市場を狙うLCCにとって、オペレーティングコストを下げることは経営上大きな意義がある。他のLCCの動きとも合わせて、今後ますますHEAへの注目が高まりそうだ。
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