昨年のCESのオープニングに合わせて未来的なレースカーに近いスーパーカーコンセプト、FFゼロワンを発表した「謎のEV会社」ファラディ・フューチャーが、今年もCES期間中に市販化モデルのコンセプトを発表した。今回のコンセプトは「FF91」と名付けられたモデルで、同社のニック・センス氏は「これは単なる車ではなく未来のモビリティ、未来の自動車産業をリフォーマットする存在となる」と豪語した。
まだプロダクションモデルもない昨年の段階ですでに北ラスベガスに工場建設を発表、その後サンフランシスコ周辺にセカンドオフィスの設立、さらには自動運転技術への参入まで発表するなど、ファラディの動きは過去の自動車産業には見られなかったほど迅速だ。最初に会社が設立されたのが2014年、それから2年と少しですでに申請した特許の数は車の技術関連が614、IoV(インターネット・オブ・ビークル、車のコネクティビティや自動運転に関する技術)が1326。うち自動車技術では21件、IoVでは212件がすでに認められている。
元々ファラディは昨年の段階でフレキシブルプラットホーム、つまり車のシャシー部分の伸縮が可能で、それにより小型車から大型車までをひとつのプラットホームで制作できる、という技術を提唱していた。これが迅速なデザイン開発につながる、という考えだ。昨年のコンセプトから1年で市販モデルコンセプトをつくり上げることができたのは、確かにこのプラットホームの成果だろう。
しかも今回発表されたFF91は「世界初、ファイバースピードでのインターネットコネクション」を謳っている。複数のCAT6 LTEモデム、デュアル・アンテナ・システムにより、いつでも映画や音楽をシームレスにストリーミングが可能だという。
高速のインターネット接続は自動運転に欠かせない要素だが、同時にユーザーエクスペリエンスにも大きな影響を与える。FF91は「キーレスカー」になるという。これまでもキーレスエントリーはあったが、スマホとの連携を完璧に行うことでオーナーが近づいただけでロックが解除され、音声コマンドで車を発進させられる。そのために搭載されているAIは音声だけではなく顔認識など、様々な方法を使ってあらかじめ登録されているオーナー情報を引き出す。車は発信するだけではなく、ドライバーに合わせたスケジュール提示、好みの音楽の設定などを自動的に行う。
もちろんこれらの機能は他の自動運転開発を行うメーカーも同様に提唱している。そこでFFが決定的な違いを見せるのが、車のパフォーマンスという部分だ。ファラディ社によるとFF91は「世界で最もパワフルなEV」だという。EVとして世界最大のバッテリーを備えるFF91は130キロワット時のエネルギーを発生。継続走行距離は500キロを越える。
さらにスピードは決定的で、停止状態から時速100キロ達成に要する時間はわずか2.39秒だという。これはポルシェの4秒、フェラーリの3秒よりも早い。元々EVはモーター仕様のため初速が早いという特徴があるが、これまで「世界最速」を記録していたのはテスラモデルSの2.5秒だった。つまりFF91は初速が世界最速となる。
この速さを活かしてファラディではEVレーシングのドラゴンレーシングを主催するなど、レース方面でも話題を生み出した。今回のFF91はこのドラゴンレーシングに参加するスポーツカーから派生した市販化のプロトタイプだ。