2024年7月15日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年2月2日

 毎年の風物詩を彩る人々がいる一方で、中国の正月にも確実に変化は訪れている。実際、前述した『新京報』で11時間並んでキップを買った女性が手に入れたキップは、自分の帰省のためではなく姉のためだった。そして自分自身は「北京に来て2年間、1度も春節には帰っていない。混雑しない春に帰る」とインタビューに答えているのだ。これは「80後」とか「90後」と呼ばれる世代の変化が大きいのだろう。正月に毎日宴会を繰り返すことや、せっかく稼いだ金のほとんどを高額なお土産を買うことに何の価値も覚えない人が増えているのである。

春節に支給される臨時収入

 一方、最も中国の〝いま〟を象徴しているのは企業の出す「節日奨」である。これはいわゆる年収にくくられるボーナスとは別の臨時収入である。この話題では景気の良い話が花盛りだ。北京の官僚の一人は、「今年の工商銀行は、課長クラスの中堅幹部に15万元(約195万円)の『節日奨』を出しています。ただ、これも驚くような話ではなく、一部の央企(国務院直轄の国有企業)のなかには50万元(約650万円)を出したところもあるくらいですからね」と、その好景気ぶりを語るのだ。

 ではプライドの高い官僚たちはどうなのだろうか。実は、官僚たちは正月の2週間ほど前に現金に加えて現物の『奨』が出ている。外務省の官僚が今年手にしたのは、油と米だ。かつては鮮魚が配られていて、現物支給のその日には、みな朝から落ち着かなくなり、午後には女性職員はみな省内で魚のうろこを取り始めるといわれたものだ。あの日本に対して厳しい発言を繰り返す姜報道官が外務省の水道で魚のうろこを取っている姿を想像するとおかしいが、これも官僚たちの要望によってどんどん現物から現金へと替わってきているという。ただ、それでもいまだに農産物が配られ続けているのは、各省庁がそれぞれ直営の農場を持っているからなのだ。これは食糧不足の時代、国の仕事に従事する者が決して食べ物に困らないようにと考えられたシステムの名残である。つまり、昔の特権の残滓である。そして肝心の現金は、国からもらわなくとも、外交部以外の官僚ならば、民間企業がその権限の大きさに見合った額をきちんと裏で用意してくれるはずだ。


本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

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