ジェームス・ダイソンは日本での、スティック型掃除機、ダイソンV10の発表会で次のように宣言した。
「私たちは掃除機の未来像を作り上げた。今後、コードレス以外の開発は行わない!」
近年の新製品の動きから予想はしていたし、噂もあった。動きが重要な掃除機は、コードレスが理想なことも十分理解できる。その上、ダイソンはEV参入を宣言しているし、全固体電池も鋭意開発しているのも知っている。しかし、少々割り切れないのも事実だ。
Dyson V10の完成度
ダイソンV10は、スティック型掃除機の4回目のメジャーな新製品に当たる。過去の3回は、2011年のDC35、2013年のDC62、そして、2016年のDyson V8シリーズだ。Dysonのスティック型掃除機は外観がよく似ているのだが、中身は技術革新そのものと言っていい位、各世代で差がある。
2011年のDC35は、DDM V2モーターを採用。スティック型掃除機の最初であり、決して褒められる出来ではなかった。なんせ、バッテリーは15分しか持たない上に、お家芸の吸引も不十分。スティック型掃除機を1つで、家がキレイにならない時代だった。
2013年のDC62は、DDM V6モーター。実用に足る吸引だったが、バッテリーの持ちは20分。しかし、スティック型がキャニスター型に取って変わることを予感させるできだった。
2016年のV8から、名前が変わると共に、新ヘッドが投入された。新型V8モーターも導入され、吸引力が十分な状態で、40分掃除ができる。コードレスが主流になる確信が得られたモデルだった。
すでにピンと来ている人もいると思うが、V8、V10はモーターの型番。「DC(ダイソン クリーナー)+追番」の名称が、「モーターの型番」に変わったということは、モーターがスティック型掃除機の性能を分けると、ダイソンは考えていると言うことだ。
もう一つ海外製品に多いのは、基本デザインを変えずに、改良を重ねることだ。基本レイアウトを変えないと言うことは、開発条件を絞ることができる。短時間での改良を可能とする。
逆に流通は、新しいモノは見た目も違うことを要求する場合が多い。新しいモノの方が、高く、売れ行きもイイからだ。しかし、これに引きずられると金型などを常に起こす必要があり、開発時間も、お金もかかる。この基本デザイン世襲型開発の成功例は、iRobot社のロボット掃除機ルンバだろう。日本の住宅事情に対しては「大きい」のだが、それでも同じサイズで開発を続けた結果、短期で高レベルのロボット掃除機を作り上げてしまった。そしてiRobotは以前からやりたかったホームシステムの開発にシフトしていると言う。
そして、2018年、Dyson V10。新型モーター、新型バッテリーに加え、パーツ・レイアウトも変更したのが、Dyson V10だ。V8でかなりのレベルまで達しており、V10で改良すべきところは、筆者が見るところ、排気が手にあたること、ゴミ捨て時に微粉ゴミが舞いあがる可能性があること、床に立たせて置くことができないことの3点。そのうち、排気はフィルターにより吸気してきれいなので問題ないと、ダイソン話している。
タッチ&トライでの第一印象は、ほどよいバランスに、強力な吸引力で扱いやすいということだった。バッテリーは60分持つ。普通、掃除機を60分以上掛けることはまずない。それなら自由度の高い、コードレスの方が使いやすいに決まっている。ジェームス・ダイソンが言うことは最もなのだ。