2024年7月20日(土)

家電口論

2018年4月20日

バッテリーの将来性

 動作時間がどんどんのびる背景には、バッテリーのレベルが上がっていることが大きく寄与している。今回のバッテリーは、7セルのニッケル・コバルト・アルミニウム組成バッテリー。NCA系と言われるリチウムイオン電池である。V8のカタログには、単に「リチウムイオン」バッテリーとあり、V10ではより詳しい記載となっているところにも、自信のほどがうかがえる。

 NCA系は、トヨタのプリウスも採用しており、高エネルギー密度に優れるリチウム電池。今、世に出ているリチウムバッテリーとしてはピカイチの性能だ。

 クルマと聞けば、当然ダイソンが手がけようとしているEV(電気自動車)事業が思い浮かばれるが、ガソリン車からEV車へ全面置き換えは、疑問視がつき始めている。理由は、「コバルト」だ。リチウムイオン電池の正極にリチウムが使われるので、リチウム電池と総称されるが、NCA系も含め色々な種類がある。が、リチウム電池を高出力化する時に、必ずと言っていいほど使われるのが「コバルト」だ。放射能物質であり、完全なレアメタル。

 産出量はアフリカのコンゴが最も多いが、今、EV人気もあり、高騰している。ちなみに、今のガソリン自動車を全部置き換えるのを疑問視するのは、コバルト埋蔵量が少ないからだ。

 リチウムイオン電池の次にくると言われているのが「全固体電池」。高出力で、安全性が高いというものの、レアメタルを使わないベストな組み合わせ、量産化技術など、開発しなければならないことが山ほどあるが、自動車メーカーで、これを狙わない会社はないホットスポットだ。

 ダイソンも抜かりはない。2015年10月にミシガン大学スピンオフ会社であるSakti3(サクティ3)を約9000万ドルで買収。全固体電池の開発の拠点としてだ。

 動きがあったのは2017年4月。Sakti3はミシガン大学の特許を基にした技術が基本になっているのは、お分かり頂けると思うが、ダイソンは、そのミシガン大学特許のライセンス契約を解除することを大学に通知したのだ。最近の特許は技術ができあがる前に出願されることが多い。全固体電池のレベルなら、間違いなくそうだ。ここで契約を切ると言うことは、その技術が実用化に向いていないか、別の技術を開発したということだ。

 この時、ダイソンはEVに先がけ、使用量の少ない掃除機で、全固体電池を試すかもしれないという予想もされたが、V10に使われたのはNCA系リチウム電池である。現在、最強であるが、これ以上の改良余地は少ないとされる。

 そして2018年になり、2020年からのEV市場への参入をダイソン氏自らアピールしている。確かに、強力無比なモーター(EVのエンジン)を作る技術はあるし、バッテリーも鋭意開発中だ。しかし目玉となる固体電池はその姿を見せないのが事実。

 ちなみに電池自体は、実用化される時、簡単にでき上がった例しがない。例えば、発明王と言われるトーマス・エジソンもEVを手がけており、そのための電池を作っている。ニッケル・鉄系アルカリ電池だ。彼は「天才は1%のひらめきと、99%の汗」という言葉を残しているが、化学の発明は、愚直なまでの努力が必要で、エジソンにも何度となく失敗を繰り返している。この時代に彼がEVを手がけたのは、当時のEVがエネルギー効率70〜80%の効率で走らせることができたのに対し、ガソリン車が20%以下だったからだ。この理屈は現代でも似たようなものだ。

 コードレスは、掃除機が目指す理想の姿であるのは間違いない。しかし、全固体電池を完全に手中に収める前に、コードレスを宣言したダイソン氏の胸中は、いかばかりであろうか。私は少し早すぎた宣言であるようにも思われる。それとも、全固体電池はほぼできあがっているのであろうか?

  
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