眠れる獅子、中国の台頭
2つ目は中国の進化ですね。私が先日、訪れたカメラメーカーですが、ピーク時には5万人の従業員がおり、カメラだけでなくスマホのレンズも製造しております。一歩工場に入ると人はいません。無人化されて、日本のロボットがたくさん入っています。また、中国の「Galanz」(ギャランツ)という電子レンジや冷蔵庫、エアコン、洗濯機、IH調理器などを作っている家電メーカーですが、工場の屋根には沢山のソーラーパネルが貼ってある。深センの70%のクルマは電気自動車なんですね。それぐらいに著しく変化しています。
それから日本の製造業が見逃したものがあります、EMS(Electronics Manufacturing Service)と言って電子関連の機器の製造をおこなうサービスなんですが、この言葉すら死語でありまして、全てをアウトソーシングできるという企業がでてきました。デザインも、パッケージングも、デリバーもおこなう。シャープが台湾・鴻海(ホンハイ)に買収されて、初めて鴻海という名前を知った方も多いかと思いますが、ここの会長のテリー・ゴウさんとはよく10年ぐらい前にアメリカの大型量販店で鉢合わせしていました。EMSで世界1位です。13兆円ぐらい販売していて、日本最大の企業より2倍ぐらい大きいのです。
また、BPO(Business Process Outsourcing)に関してですが、これは経理や財務、請求書や領収書の発行からコールセンターの業務に至るまでやっております。一番大規模におこなっているのが中国の大連。ここを利用して急成長を遂げたのがアメリカの企業です。アメリカ人は割り切ったら決断が早いですから、自分の手に負えないことは全てアウトソーシングしていきます。
トランプさんはそのことをご存じなのかなという心配もございますが、例えば日本の企業は未だに製品開発、デザイン、ブランディング、生産、販売、リペアサービスからコールセンターまで垂直にやっています。これをバーチャル・コントロールなどと言っていますが、アメリカの企業はホリゾンタルなコントロールを採用しており、Appleは研究開発、ブランディング、デザインまではおこなうが、その先はEMSに委託しています。商品を売ることはお客様とのコンタクトの場であるので、自分でやっています。しかし、修理やコールセンターは任せるという方針です。かつては栄華を誇った日本が、現在はアメリカと中国、韓国、台湾からも攻められて、この10年間は悲壮な目にあいました。いくつもの有名企業の名前が消えていきました。