つまり、学校で勉強は一番をとり、ピアノやバイオリンの練習は欠かさない。おまけに、勉強以外の課外活動やゲーム、友達との遊びは禁止、というわけだ。
嫌がる娘に無理やりピアノやバイオリンの練習をさせ、夏休みに家族で海外旅行に出かけても、宿泊先のホテルの宴会場やレストランでピアノを借りて、観光よりも練習を優先するなど、かなりのスパルタ教育ぶりを本書は回想している。
では、中国式と欧米式では、子どもの教育のしかたに、どんな違いがあるのだろうか。本書の筆者であるチュア教授は、大きな違いが3つあると指摘する。
First, I’ve noticed that Western parents are extremely anxious about their children’s self-esteem. They worry about how their children will feel if they fail at something, and they constantly try to reassure their children about how good they are notwithstanding a mediocre performance on a test or at a recital. In other words, Western parents are concerned about their children’s psyches. Chinese parents aren’t. They assume strength, not fragility, and as a result they behave very differently. (p51~52)
「第1に、欧米の親は子どもの自尊心にとても気を配る。何かで失敗したら子どもが傷つかないだろうかと心配し、学校でのテストや音楽会での演奏のできがあまりよくなくても、よくできたと子どもを常に励ます。つまり、欧米の親たちは子どもの気持ちを気遣う。中国人の親はそうではない。弱気にでないで、強い態度で臨むため、その結果として、とても違う行動に出る」
例えば、学校のテストで多少悪い点数をとってきても、欧米の親たちは子どもたちをほめる。半面、中国人の親は、「ばか」や「役立たず」「恥だ」などと、子どもをののしるという。
Second, Chinese parents believe that their kids owe them everything. The reason for this is a little unclear, but it’s probably a combination of Confucian filial piety and the fact that the parents have sacrificed and done so much for their children. (p53)
「第2に、中国人の親たちは、子どもは親にすべてを負っている、と信じている。その理由はあまりはっきりしないが、儒教の親孝行の考え方にくわえ、中国人の親は子どものために犠牲を払い相当のことをしてきたことが、おそらく影響している」
子どもは親のおかげで生きていけるのだから、親に従うのは当たり前だ。だから、厳しく教育する。古い日本人なら納得がいく教育観が、中国人の親にもあるようだ。
Third, Chinese parents believe that they know what is best for their children and therefore override all of their children’s own desires and preference. That’s why Chinese daughters can’t have boyfriends in high school and why Chinese kids can’t go to sleep-away camp. (p53)
「第3に、中国人の親は子どもにとって何が最善かを分かっていると信じている。その結果、こども本人の希望や好みをすべて踏みにじる。だから、中国人の娘は高校でボーイフレンドが持てないし、中国人の子どもはキャンプで外泊することも許されない」
本書が描くあまりのスパルタぶりをみて、アメリカでは本書に対し批判も巻き起こった。こどもの人権侵害や虐待にもつながるとの批判が出た。しかし、これはあまりに表面的な批判だ。なぜなら、本書は単なるスパルタ教育の成功話を書いている訳ではないからだ。後半に入って、事態は急転換する。