日本に留学すれば、月20万〜30万稼げる
ベトナム経済も成長しているとはいえ、恩恵は一般庶民にまで届いていない。共産主義国で、かつ賄賂大国という事情もあって、政府の有力者にコネのない若者には生き難い国でもある。海外への出稼ぎ希望者は多いが、行き先は台湾や韓国、もしくは実習生を受け入れる日本などに限られる。そんななか、日本への「留学」の道が開かれたのだ。
ただし、よほどの富裕層でなければ、日本の留学ビザを取得するための経済力はない。ベトナムの庶民が日本へ留学するためには、斡旋業者に頼り、ビザ取得に必要な証明書類をでっち上げてもらうしかないのだ。
「日本に留学すれば、月20万〜30万円は簡単に稼げる」
出稼ぎブームの初期には、そんな甘い言葉で若者を勧誘する斡旋業者も多かった。「20万〜30万円」といえば、ベトナム庶民の年収に匹敵する金額だ。留学生のアルバイトとして認められる「週28時間以内」という法律を守っていれば稼げないが、事情を知らないベトナム人たちは業者のもとへ殺到した。そして、でっち上げの数字が並ぶ書類を準備してもらい、続々と日本へ出稼ぎに行くことになった。
斡旋業者には、日本へ留学生を送り出せば1人当たり数十万円が入る。留学希望者が支払う手数料に加え、受け入れ先となる日本側の日本語学校から1人の留学生につき10万円程度のキックバックがあるからだ。物価水準が日本の10分の1程度のベトナムでは、日本への留学生送り出しは「産業」と呼べるほどだ。
斡旋ビジネスには、現地の日本人が関わっているケースも目立つ。受け入れ先の日本語学校とのやり取りなどが生じるからだ。
「ハノイで複数の日本語学校を経営し、1億円以上も稼いだと豪語している日本人もいる」(現地在住の日本人)
行政機関や銀行に賄賂を払い、ビザ取得に必要な書類をでっち上げ、日本へと留学生を送り込んでのことだ。