2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年10月31日

 IS(「イスラム国」)は領土を持った初めてのイスラム過激組織であった。新しいカリフ制のイスラム国家を建設するという「イスラム国」の創設者アル・ザルカウィの野心は、イデオロギー的にイスラム主義者にアピールし、過激派戦闘員が世界各国から「イスラム国」を目指した。2014年のピーク時には、86か国から3万人以上の外国人戦闘員が「イスラム国」にいたと言われる。

(serkansenturk/zabelin/iStock)

 他方、領土を持つと攻撃にさらされやすい。「イスラム国」は米主導の有志連合をはじめ、ロシア、トルコ、イラク、シリアの攻撃を受けた。米英の空爆も激しく行われた。その結果、「イスラム国」は領土の98%を失い、アルカイダなど領土を持たない従来のイスラム過激派組織と同じような組織になった。

 しかし、「イスラム国」は完全に制圧されたわけではなく、イラクとシリアで復活する兆しが見えるとの指摘がある。例えば、米RAND 研究所政治学者のColin P. Clarkeは、Foreign Policy誌ウェブサイトに10月10日付けで掲載された論説‘ISIS’s New Plans to Get Rich and Wreak Havoc’において、次のように指摘している。

・ISのイラクとシリアのスンニ派多数地域での復活が近い。その主な理由は軍資金と新たな収入を得る腕である。一つはイラクとシリアから持ち出した4億ドルの資金(これを主としてトルコにある系列会社を通じて資金洗浄)であり、もう一つは、住民から金を巻き上げる犯罪行動である。

・潤沢な資金基盤の上に、ISはイラクとシリアの各地で再組織化を図っている。残存する組織を中心に、戦闘員の再組織化を図ろうとしている。

・西側ではISに対する戦いを、米国の異なる政権が実施する不連続なものと見がちであるが、ISにとっては、創設者アル・ザルカウィ以来続いている長い作戦である。米国や同盟国がこの点を理解しない限り、ISは米軍が完全撤退するまで、またはISが領土を取り返し、次のイスラム国家建設計画を実施するまで、地下に潜り、再び地上で勢力を誇示する戦略を繰り返すだろう。

参考:Colin P. Clarke,‘ISIS’s New Plans to Get Rich and Wreak Havoc’(Foreign Policy, October 10, 2018)
https://foreignpolicy.com/2018/10/10/isiss-new-plans-to-get-rich-and-wreak-havoc/


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