反政府サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏の殺害疑惑事件で、サウジから乗り込んだ暗殺部隊が同氏に体形が似通った“替え玉”を使って生存しているように見せ掛ける偽装工作を行っていたことが分かった。米CNNなどがトルコ当局などから入手した映像を流した。トルコのエルドアン大統領が23日公表する捜査結果にさらに新事実が出てくるか注目される。
付け髭も
米紙ワシントン・ポストが明らかにしたところによると、この“替え玉”はサウジの治安機関に所属するムスタファ・マダニ(57)。送り込まれた暗殺部隊15人のうちの1人だ。今春、ムハンマド皇太子がニューヨークを訪問した際、それに先立って同市を訪れたことが米国土安全保障省の調べで分かっている。
新たに放映された映像によると、マダニはカショギ氏が10月2日、イスタンブールのサウジ領事館に入る約2時間前の午前11時ごろに領事館に到着。この時は青色のシャツに黒と白色のスニーカーを履いていた。
マダニが領事館を出てきたのは入館して4時間後の午後3時ごろ。入館した時とは違い、カショギ氏が来ていたのと同じ、グレーのズボンに黒いジャケットを着用していた。しかし、足元はスニーカーのままだった。
カショギ氏はこの時点ですでに殺害されていたと見られ、マダニは同氏が着ていた服を着て監視カメラに納まり、同氏が生存しているかのような偽装工作をした可能性が強い。その証拠にマダニはカショギ氏に似せるため付け髭までしていた。
マダニが館外に出てきた時はもう1人の男と一緒で、2人はタクシーで公衆浴場に向かい、再び現れた時は元の服装に戻っていた。プラスチックバックを持っており、この中に着替えたカショギ氏の服が入っていたのではないかと見られている。
この衝撃的な“替え玉”の映像はカショギ氏に対する作戦が極めて計画的だったことを物語るものだ。サウジ政府は20日の発表で「口論と格闘の末死亡」と偶発的な事故であることを強調しているが、実際には周到な準備をした大掛かりな作戦だった。サウジ側発表の信ぴょう性に強い疑いを生じさせるものだ。