中東を読み解く

2018年10月23日

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“反体制派狩り”に拍車

 今回の事件を通じて明らかになりつつあるのはムハンマド体制で拍車が掛かった在外の“反体制派狩り”戦略だ。反体制派をネットで攻撃する一方、甘い言葉で帰国を持ち掛け、場合によっては拉致をもいとわないというものだ。カショギ氏はこの戦略の犠牲者ということになる。

 米ニューヨーク・タイムズが報じたところによると、事件後にその責任の一端を問われる形で解任された5人のうちの1人、サウド・カハタニ王室顧問がこのネット作戦の元締め。顧問は「トロール・マスター」(投稿導師)とか、トランプ政権の黒幕と言われた人物をもじって「サウジのスティーブ・バノン」などと評されていた。

 首都リヤドにある戦略の作戦基地「投稿ファーム」では若者を中心に数百人のネット専門家が日夜活動。彼らはツイッター・サーフィンで海外の反体制派の投稿と活動を突き止めるのが主な役割だ。ムハンマド皇太子自身や、その皇太子が進めるイエメン戦争に敵対するツイート、女性の権利を主張するツイートなど、キーワードをカギにして投稿者を探していくのだという。

 危険と判断される投稿者を突き止めた際には、ソーシャルメディア(SNS)の専門家で構成する「攻撃部隊」に情報を送り、この部隊が投稿者の携帯やパソコンに攻撃メッセージを送り付けるというのが作戦の流れのようだ。カショギ氏も毎朝、脅迫や侮辱のメッセージを受け取っていたという。

 こうした攻撃にさらされた反体制派は最近、ツイッター上で逆襲するための反乱組織「電子蜂」を立ち上げた。カショギ氏もこの活動を応援するためカナダ在住の反体制派に5000ドルを送金、殺害される10日ほど前には「蜂がやってくる」とツイートしていた。

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