2024年4月20日(土)

家電の航路

2011年10月8日

すぐに触ることができたSonyTabletS

 まずは、9月17日に発売されたばかりの「Sony Tablet S」。隣に展示されていた「PlayStation Vita」(PSヴィータ、ソニー・コンピュータエンタテインメントが2011年末から世界各地域で順次発売を予定)には30分待ちの列ができていたがSony Tabletは並ぶことなく触ってみることができた。

 「後追いでしかない」

 前田さんの感想は、「家電の航路」で口を酸っぱくして主張されているのと同じだった。

 ソニーでもう一つ長い列を作っていたのは、「3D対応ヘッドマウントディスプレイ」。かつてあったメガネ型テレビ「グラストロン」の3D版だ。前田さんは、顔面に大きなメガネをかけた人々をみて「異様な光景だな」と手厳しい。

上・ソニー「3D対応ヘッドマウントディスプレイ」(2011年)
下・ソニー「グラストロン・ライト」(1999年)

 ソニーがもっともスペースを割いていたのは、巨大な壁にプロジェクター映像を映したステージだった。

 「ユーザーエクスペリエンス」というお題目がどんなものか説明するためのステージだ(参考:YouTube)。これもアップルのモノマネを連想させた。「紹介できる商品がないから、ステージが一番大きなスペースをとることになるんだ」と、前田さんは指摘した。

 10月6日、米アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏が亡くなった。シーテックを訪れたのはその前日の5日だったので、まさかそんなことになるとは想像もしていなかったが、前田さんはWEDGE10月号の「家電の航路」でも引用したジョブズの言葉を口にした。

 「人は形にして見せてもらうまで自分は何が欲しいのか分からないものだ」

 逆にいうと、それを見せることこそが、家電メーカーの仕事だということだ。ソニーに限ったことではないが、今回のシーテックでなにか「形」を見せてくれるようなものはなかった。

 帰りの電車を待つ喫茶店のなかでつぶやいた前田さんの言葉が印象的だった。ガラス越しに、シーテックら帰る人たちを見ながら「皆、疲れた顔をしているよね。ドキドキしてワクワクするようなモノを見たという顔をしている人が全然いない……」。


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