2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2019年2月27日

(Tetiana Lazunova/Gettyimages)

 睡眠の重要性が指摘される中、「目覚め方改革プロジェクト」は3月15日の「世界睡眠デー」を前に、19日に都内で「“働き方改革”は体内リズムの改善から」と題したメディアセミナーを開催した。

 同プロジェクトのメンバーである内村直尚久留米大学医学部教授が「パフォーマンスを左右する目覚めと体内リズム」について講演、「睡眠問題を引き起こす理由として、日本が夜型社会になったことによる『体内リズムの乱れ』が原因である。日本人は5人に1人が睡眠の問題を抱えている」と指摘、睡眠不足による不眠が認知症、高血圧症、糖尿病などを引き起こす恐れがあることを明らかにした。

今年の大型連休は要注意

 また、休日の朝寝坊と体内リズムの関係について「休日の朝寝坊で日曜夜の体内リズムが遅れる。今年の4月末から5月初めにかけての10日間の大型連休は体内リズムが乱れやすいので、例年よりも5月病が増える可能性があり要注意だ」と警告した。

 体内リズムの整え方については「リズムが乱れがちな週末も起きる時間を一定にすることから始めて、朝、すっきりと目覚めることが重要だ。光を浴びる時間が早くなると朝型リズムを整えやすくなるので、朝の光を上手に利用してほしい」と述べた。

「睡眠不足は酩酊状態」

 また内村教授は「日本では睡眠についてきちんと教育されてこなかった。睡眠の重要性が指摘され出したのは10年前からで、それまでは『医者は眠るな』と教えられてきた。24時間コンビニ時代により、日本人の睡眠の質が低下した。夜はきちんと寝るべきだという教育を行う必要があり、日本はまだ睡眠の後進国だ」と教育の重要性を訴えた。

 産業医としてビジネスパーソンの睡眠を長年にわたり見てきた特定非営利活動法人健康経営研究会の岡田邦夫理事長は、取り組むべき睡眠問題に関して「睡眠不足は酩酊状態と変わらず、企業リスクである」と強調、睡眠不足は労働生産性を低下させ、経済的損失も大きいことを指摘した。岡田理事長によると、1週当たり49時間以上の長時間労働者の割合(就業者)が最も多いのが韓国の32%、続いて日本の20.1%、米国の16.4%、フランスの10.5%などとなっている。

大きい経済的損失

 一方で労働生産性はフランスや米国と比較して日本は低く、岡田理事長は「日本は長時間労働をすること低い生産性を補っている。しかも日本の社員は自分が働いている企業を信頼する数値が主要国の中で最も低い。睡眠時間に関してはOECD諸国では韓国と日本が毎年最低睡眠時間で競っている状況だ」と述べた。睡眠不足による経済的損失では「日本は1380億ドルにもなり、GDP比では2.92%になる。この比率は先進国の中では最も高い」と指摘した。

 過去には責任者の睡眠不足から世界で重大事故が起きている。1979年3月に起きた米ペンシルベニア州スリーマイル島の原発炉心融解放射能放出事故は、疲労して眠気が強い交代勤務担当者が機械の故障を見逃した人為ミスが原因だった。86年1月に起きたスペースシャトル・チャレンジャーの爆発事故は、打ち上げ責任者の長時間労働・睡眠不足による判断ミスだった。また、89年3月にアラスカ沖で起きたエクソンのバルディーズ号の原油流出事故は、船員の疲労と眠気が原因だった。

 岡田理事長は「昼寝を推奨する企業が増えている。眠気がありながら無理をして仕事をするよりも15分から20分程度の短時間の昼寝をすることで、心筋梗塞の死亡率が減ったデータも報告されている」と昼寝の効用を指摘した。内村教授は「眠たくなる前に短時間昼寝をすると認知症のリスクが減る。心臓疾患やうつ病の予防にもなるので、企業でかなり導入されてきている」と述べた。


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