ゼロ成長で銀行が縮む
ゼロ成長というと、一般企業にとっては「去年と同じ売上、去年と同じ生産量、去年と同じ利益」ということになりますが、銀行業界にとってはそうではありません。
ゼロ成長だと一般企業が新しい設備を作らないので、彼らは利益のうちで配当されなかった部分を銀行借入の返済に用います。古くなった設備を新しくする更新投資は行いますが、そのための資金は減価償却で賄えてしまうので、銀行から借りる必要がないのです。つまり、日本経済がゼロ成長だと、銀行業界は貸出残高が減ってしまうのです。
各行は、貸出残高を維持するために「貸出金利を引き下げてライバルから客を奪おう」としますが、ライバルも同じことをするので、各行ともに貸出金利が下がるだけで、貸出残高は減ったままとなります。つまり、量と金利の両方が悪化するダブルパンチを食らうわけです。
マイナス金利の打撃も大
日銀によるマイナス金利も、銀行の収益に大きな打撃となっています。銀行が日銀に金利を支払っているから、ではなく、貸出金利全体を押し下げているからです。
銀行が日銀に預けている預金は、準備預金と呼ばれていますが、その大部分については日銀が銀行に利子を払っています。一部は無利子です。残りがマイナス金利です。日銀によると、利子を払っている分が200兆円程度、無利子の分が140兆円程度、マイナス金利の分が20兆円程度となっています。
銀行ごとに「利子を払ってもらえる残高の限度」「無利子で預かってもらえる残高の限度」が決まっていて、それを超えた部分についてのみマイナス金利が適用される、というわけです。
マイナス金利が適用されている金額はそれほど大きくありませんね。ところが、銀行としては、それが大きな負担になっているのです。
預金が増えるとその分をマイナス金利で日銀に預けなければならないため、少なくとも増えた分の預金だけは何とか貸出を増やそうとします。世の中の資金需要は限られていますから、安い金利でライバルから客を奪って来るしかありません。
しかし、ライバルも同じことを考えますから、金利引き下げ競争が激化するだけで、どこの銀行も貸出残高は増えず、結局すべての銀行の決算が悪化するだけに終わります。
貸出金利の引き下げ競争が行われると、借り手企業の利益は増えますから、日本経済全体としては損得は無いのですが、銀行業界としては大変苦しいということになるわけです。
以上のメカニズムは、メガバンクも同じ事ですが、メガバンクは海外等で稼ぐ事ができるので、地銀と比べればまだマシだと言えるでしょう。