日銀が発表した「金融システムレポート」によれば、10年後には地銀の過半が赤字に転落しかねないとのことです。そこで今回は、その原因について考えてみましょう。
日銀は、貸出の伸び鈍化と貸出利鞘の縮小、信用コストの増加、有価証券関係損益の減少を、理由として挙げていますが 、本稿はその中の貸出の伸び鈍化と貸出利鞘の縮小に焦点を当てることとします。
ゼロ金利は銀行にとって辛いこと
日銀が金融を緩和して金利をゼロにしてから約20年が経ちますが、これは銀行にとっては大変辛いことなのです。銀行の本業は預金を集めて貸出をして利鞘(貸出金利と預金金利の差)を稼ぐ事なのですが、これを預金部門と融資部門に分けて考えてみましょう。
預金部門は集めた資金を他行に市場金利(現在はゼロ)で貸すとします。融資部門は必要な資金を他行から市場金利で借りるとします。そうすると、預金部門は収入がゼロですから、コスト分だけそっくり赤字です。これが地銀が苦しい最大の原因の一つなのです。
別の見方をしてみましょう。ゼロ金利ということは、銀行は必要な資金をゼロコストで好きなだけ調達出来るということですから、預金部門が不要なのです。それならば預金部門を解散すれば良いかというと、そうでもありません。
将来、ゼロ金利時代が終わり、高金利時代が来た時に、必要資金を他行から高金利で借りてくるのは辛いからです。一般に、預金金利は市場金利ほど変動しないので、高金利時代には預金金利の方が市場金利よりはるかに低いのです。
実際には、現在はマイナス金利ですから、ゼロ金利より更に銀行にとっては苦しいことになります。預金部門が預金を集めれば集めるほど銀行決算が悪化するわけですから。