みなさん、はじめまして。川柳作家の杉山昌善です! 僕はいま60代なんだけど、ずいぶん川柳に笑わされ、川柳に救われながら生きてきました。
世間でもサラリーマン川柳とか○○川柳って流行ってるでしょう? なぜか。だって川柳にすると癒されるんだもの。鬼上司や恐妻を詠んでみる。自分の失敗をおもしろおかしく詠んでみる。そうすると、嫌なあいつもドジだった自分も可愛く見えちゃったりする。川柳って心の機微をとらえて笑いに変える作用があるんだね。
その昔、僕が何度目かの失恋したとき(笑)。すごくつらかったんだけど、5・7・5にしてみたら自分を客観視できた。居酒屋でのたうち回る自分をもうひとりの自分が見てるとさ、不思議と癒されるんです。ほら、幽体離脱みたいなイメージだよ(笑)。
遠い雷 別れた人が出産す
真剣に落ち込んだあのときの自分がカワイク見えちゃうなあ。
もちろん、感情を吐露するだけならブログやツイッターだっていい。でも、それらと違うのは、川柳には型や原則があるってこと。自分の作品を他人が目にすることを前提に、いくつかの原則に気持ちをあてはめていくと、わずか17音字のりっぱな作品になるんだよね。
この連載では、堅苦しいことは抜きに、幅広い川柳の世界をご紹介していきます。カルチャー教室に遊びに来たつもりで読んでくださいね。
初回だから、まずは川柳がどんなものかをお話ししましょうか。
人間クローズアップ!
川柳が5・7・5だってことは日本人なら知ってますよねえ。じゃ、同じく連歌に端を発した短詩文芸である俳句との違いは? 大雑把な分け方をすると「俳句は風景画、川柳は人物画」になります。
【俳句】
雪よりも真白き春の猫二匹 (高浜虚子)
五月雨や大河を前に家二軒 (与謝蕪村)
まるで日本画や墨絵のように美しい世界だ。いっぽうの川柳は・・・?
【川柳】
愛想のよいをほれられたと思い (誹風柳多留)
蝿は逃げたのに静かに手を開き
経験ないかなあ。蝿を両手でパッと・・・あ、いま逃げたのが見えたよね? でもなんか期待しちゃうっていう(笑)
風景画と人物画の違い、わかりました? このように、人間の心をクローズアップしたのが川柳なんです。また、俳句にも人間の感情(喜怒哀楽)をめいっぱい5・7・5で表す、種田山頭火や尾崎放哉のように、心象を強く盛り込んだ句もありますし、近年の俳句はどんどん心象を表現して川柳との境目が曖昧になってはいます。
でも、季節にとらわれずに人間くさい5・7・5を詠むのが川柳だと考えてくださいよ。
さ、これが大前提。